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Business & Economic Review 1999年10月号

【MANAGEMENT REVIEW】
リスクマネジメントの視点から見たコンピュータ2000年問題対応の現状と課題(2)

1999年09月25日 林志行、湯川慶子


要約

99年5月号(99年3月中旬データ使用)の続編として、99年8月中旬現在のデータを使用し、残り3カ月でのコンピュータ2000年問題(以下、Y2K)への対応と新たに顕在化したビジネスリスクおよび課題の抽出を試みた。

行政のY2K対応は、前回調査分析時点よりも格段に進んでいる。政府関係機関、都道府県ともに順調に対応作業が行われている。しかし、市町村レベルでは、システムの模擬テストまで完了したものは半数に満たず、住民生活への影響が懸念される。

民間重要分野のY2K対応では、大手金融機関、電力会社、ガス会社、電気通信事業者、航空業界、鉄道などでは順調に対応が進んでおり、予定よりもかなりの急ピッチで作業が行われている業界もある。しかし、中小の金融機関の一部や医療機関全般での対応の遅れが目立っており、行政により厳しい措置がとられる可能性もある。

主要企業のY2Kに関する情報開示度を分析した結果、情報開示には「リスクヘッジ型」「営業展開型」「顧客満足型」「株主重視型」の4つの類型がみられた。「リスクヘッジ型」と「株主重視型」はリスクの自社波及を回避する戦略であり、「営業展開型」と「顧客満足型」はビジネス展開を意識した戦略である。これらパターンの選択は各企業が抱える顧客の特性や経営方針によるところが大きいが、「株主重視型」に関しては、株主対応に精通していない企業が採用した場合、情報の流出など新たなリスクを招く危険性がある。

すでに顕在化したY2K被害としては、「未対応システムによる被害」「システム変更による被害」「カーナビゲーション問題」が存在する。

10月以降のY2Kへの企業対応では、Y2K対応に関する社員の役割と機能を社内・社外(家庭・地域社会)で階層化し、リスク顕在時の混乱を防ぐことが重要となる。また、Y2K対応部署とは別に、経営企画部や社長室が全体を俯瞰しながら、万が一の場合の他社からのY2Kリスクの波及を再度検証することも重要となる。

その他課題として、海外駐在員のサポート、システム保守要員(含むアウトソーシング分)の確保、Y2Kを騙った新種のウイルスの発生可能性を考慮すべきである。
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