Business & Economic Review 1999年09月号
【シンポジウム】
智融業の時代-金融業のナレッジ・サービス戦略
1999年08月25日 -
要約
株式会社日本総合研究所創発戦略センターは、去る1999年6月8日(火)、東京ロイヤルパークホテルにおいて「智融業の時代-金融業のナレッジ・サービス戦略」をテーマとする第1回スマート・バンキング・シンポジウムを開催した。本シンポジウムは、当社が昨年7月に設立した「スマート・バンキング・コンソーシアム」(日米異業種企業65社が参加)が、今年3月にその活動を終了した締めくくりとして企画された。本シンポジウムは、住友銀行に特別協賛を、東洋経済新報社に協力を、日刊工業新聞社に共催を賜った。
欧米の金融業は、日本が現在直面している金融革命を、既に70年代以降に経験し、現在は「第二の革命」の真只中にいる。「第二の革命」とは、インターネット革命の急速な進展で加速する情報革命のことである。
情報化の波は、産業革命の進展によって高度に発達した20世紀の資本主義経済を次の2つの視点でさらに進化さようとしている。
第1は、「知識資本主義(ナレッジ・キャピタリズム)」の出現である。知識資本主義の時代にィいては、「知識や智恵」が最高の経営資源となり、最高の商品やサービスとなる。
第2は、「顧客中心市場(バイヤー・セントリック・マーケット)」の出現である。アメリカでは、顧客にゲートウェイ機能を提供する「ニューミドルマン」が多数誕生している。ニューミドルマンとは、供給側の論理で仲介する従来の中間業者(ミドルマン)とは一線を画す中間業者であり、いま、エレクトロニック・コマース市場で急速に成長している。
金融業は、このような時代においては、「市場の自由化」をもたらす金融革命に対処することが必要なばかりでなく、「市場の情報化」をもたらす情報革命にも対処しなければならない。
本シンポジウムのテーマである「智融業の時代-金融業のナレッジ・サービス戦略」における「智融業」とは当社が名付けた造語であり、それは読んで字のごとく、顧客に対して高度な知識や智恵を提供できる企業のことである。日本の金融業は、この言葉の意味を深く理解し、これから金融革命と情報革命の同時革命をくぐり抜け、「智融業」へと進化していくことが求められている。
本シンポジウムでは、このような問題意識にもとづき、まず当社社長の小井戸よりシンポジウム全体についての問題提起を申し上げ、次いで第1部では、当社創発戦略センター主任研究員の鴨志田晃より「米国に学ぶ智融業-5つの戦略」と題してアメリカの最先端事例を報告申し上げ、第2部では、当社取締役創発戦略センター所長の田坂広志より「智融業の時代」と題して、これからの日本市場で何が何が起こるかについて報告申し上げた。