Business & Economic Review 1999年09月号
【論文】
スマートシニアがけん引する21世紀のシニア市場-わが国シニア市場創出のための5つの戦略
1999年08月25日 創発戦略センター 村田裕之
要約
「超高齢社会」が間近に迫っている。これに関する議論として、最近、介護保険のあり方や年金制度改革に関するものが多くみられる。しかし、超高齢社会の今後の健全な発展のためにはこのような議論のみでは不十分である。むしろ超高齢社会の到来を「シニア市場という新しい成長市場の出現」ととらえ、その市場創出策も同時に議論すべきである。
しかし、現状では巨大なシニア市場全体をどのように創出していくのかという戦略が多くの民間企業にはなかなか見えてこない。その最大の理由は、これまで50歳以上のシニア世代は市場ターゲットとしてあまり重点が置かれておらず、多くの企業においてシニア市場を積極的に創出するという発想が欠如していたからである。
シニア市場とは、他世代の市場に比して「バイヤー・セントリック・マーケット(顧客中心市場)」の度合いが強い。この市場においては単品での提供ではなく、「パッケージ商品」「トータルサービス」での提供が必要である。加えて、商品提供者のサービス姿勢が顧客に冷厳に問われる市場である。
以上の背景より、本稿ではシニアサービス先進国アメリカの事例を参考にしつつ、わが国でシニア市場を創出するための「5つの市場創出戦略」を提案するものである。
一方、民間企業がこの5つの市場創出戦略を自社単独で実行するのは時間およびコストの両面において容易ではない。したがって、この実現のために企業がとるべき有効な手段は、「異業種企業コンソーシアム(企業連合)」を組織化することである。そして、この異業種企業コンソーシアムの組織化に際し、既に先進サービスを提供しているアメリカ企業などの参加が極めて重要である。なぜならこれらの企業はシニアビジネスという高度なヒューマンスキルが求められる事業において、多くの優れたサービスノウハウを有しているからである。
1999年は国連が定めた国際高齢者年である。この記念すべき年に単なる親睦ではない国際的な協働作業により、わが国シニア市場の創出を図ることの社会的意義は極めて大きい。