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Business & Economic Review 1999年06月号

【論文】
公的組織の民営化について-資本と企業経営の論理からのアプローチ

1999年05月25日 調査部 翁百合


要約

わが国では行政改革が進められているが、小さな政府に向けての、官から民への民営化の動きが進んでいない。経済全体の効率性を達成する手段としては、「民営化(資本の提供者が民間になること)による規律」、「競争による規律」、「政府による規律」の3つが考えられるが、そのうち最も効果的な手段は「民営化による規律」であり、行政活動全体を民営化可能性の観点から再検討する必要がある。

いわゆる契約理論から考えると、民営化の条件は、政策目的について政府と経営者が契約を結べること(可測性)と、事業性の存在である。このように考えると、原理的には特殊法人なども含め、多くの行政活動が民営化検討対象になり得る。実際、アメリカの住宅金融機関などは、民間出資の組織であるが、政府が一定の関与をすることによって、政策目的を達成している。

また、民営化のメリットが出る条件とは、民営化のメリット(コーポレートガバナンスのしくみによるインセンティブとイノベーションの向上)がコスト(社会的便益が損なわれる可能性)を上回ることである。メキシコの民営化の実証分析をみると、(1)公的企業の下でのリストラは市場から評価されないこと、(2)民営化による規律は、当該産業が競争的であるかどうかを問わず、効果を持ったことがみてとれる。日本の三公社も、民営化以降いろいろな問題を抱えてはいるが、労働生産性の向上などを映じて、収益性を改善し、価格の低下やサービスの向上が実現していることがみてとれる。

ただし、どうしても当該行政活動の民営化が難しい場合には、次善的な規律づけの方法として、行政活動のまま、(1)競争による規律(コンテスタブルマーケットの導入、ヤードスティック競争の導入など)か、(2)政府による規律の工夫、を考えていかなくてはならない。政府による規律の工夫の方向性としては、(1)予算統制などで厳格に実施する方向と、(2)組織に自主性・弾カ性を持たせ、より民間資本の論理を働かせる方向がある。後者の方向のうち、現在わが国で対応しようとしているのが、(1)独立行政法人化(公的企業であるが、インセンティブ契約の考え方を導入し、民営化に近い規律づけを図る)、(2)財投機関債の発行(負債の提供者を民間とし、当該機関の規律づけを促すこと)、といえる。どちらも、それなりの効果は期待されるかもしれないが、上述の民営化の効果と比較すると圧倒的に効果は小さいといえる。

以上の整理を踏まえて、ケーススタディとして、特殊法人への出資という形態を考えると、企業経営に対する規律づけという観点からは問題が大きく、横断的な見直しが不可欠である。特殊法人経営の見直しの手順としては、法人数を削減させるだけではなく、第一に、当該特殊法人の独立行政法人化・民営化が可能かどうかの検証、第二に企業財務面の改革(出資金の位置づけ見直しとコスト分析の強化、利益処分の改善など)が必要である。
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