Business & Economic Review 1999年02月号
【MANAGEMENT REVIEW】
標準ビジネスプロセス活用による効率的M&A/サプライチェーン・マネジメントの実現
1999年01月25日 神頭大治、多部田浩一
要約
最近、世界的規模での合併・買収(M&A:Merger & Acquisition)やサプライチェーン・マネジメント(SCM:Supply Chain Management)が新しい経営の潮流として注目を集めている。
M&Aを業務の視点からみると、風土や仕事のやり方が異なる人々が一体となって業務プロセスの効率化を目指すことであり、サプライチェーン・マネジメントとは、機能の異なる部門間・企業間の人々が顧客への迅速な対応や在庫の削減のために一連の業務プロセスを効率化することである。
こうした取リ組みを成功させるためには、業務や業務プロセスの意味・役割が異なる人々の間で共通に理解されていなければならない。企業間あるいは部門間でビジネスプロセスやプロセスの成果の評価尺度が異なると、効率化を目的とした合併やサプライチェーン・マネジメントが、かえって非効率性を生み出す可能性が高い。
M&Aやサプライチェーン・マネジメント先進国であるアメリカにおいては、企業間で業務プロセスを比較するための基準としてアメリカ生産性本部(APQC:American Productivity & Quality Center)やサプライチェーン協議会(SCC:Supply-Chain Council)によって標準ビジネスプロセスの策定作業が行われている。1998年9月には、アメリカ企業の科学技術競争力の向上を担うアメリカ工業技術院(NIST:National Institute of Standards and Technology)もサプライチェーン協議会に参画し、協議会が作成した標準ビジネスプロセス・モデル(SCOR:Supply Chain Operations Reference Model)の技術標準への組み込みや技術開発プロセスへの利用を開始している。
一方、わが国においては、個々の企業で独自に業務の標準化は進められてきたものの、どの企業にも共通に適用可能な標準ビジネスプロセスの有効性に対する理解が必ずしも十分とはいえない。
本稿では、以下にこのようなビジネスプロセスの標準化によって得られる効果を述べる。結論を先取りすれば、「標準」への過度の依存は問題であるものの、業務の効率化、拡大再生産による日本企業の再生のためにはビジネスプロセスの標準化が必要である。今、まさに官民協力のもとでビジネスプロセス標準化の推進に取り組むときである。