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Business & Economic Review 2001年12月号

【POLICY PROPOSALS】
わが国金融市場の機能発揮に向けて-金融システムの運営主体に関するガバナンスと官民役割分担の観点からの考察

2001年11月25日 調査部 金融・財政研究センター 翁百合


要約

本稿では、金融システム機能のうち、価格情報提供、決済、リスクコントロール手段提供といった(資金仲介以外の)機能を果たす運営主体の内外の動向を踏まえて、運営主体の在り方や官民の役割分担について考える。

証券取引所といった「価格情報提供機能」、証券決済機構、資金決済機構などの「決済機能」を担う運営主体に関して、欧州やわが国で様々な角度から組織の見直しの動きがみられている。これらは、市場間競争の激化を背景に、いずれも市場の活性化、効率化を実現しようと行われている取り組みである。

海外の事例などをみると、証券取引所は株式会社形態をとって上場をし、広く市場からの監視が可能な仕組みを構築しようとの動きがみられる。しかし、清算機関や証券決済機関は、株式会社であってもその取引の性格上、ユーザーや証券取引所による株式会社形態であったり、中央銀行が運営する場合が多い。また、クリアリングシステムの資金決済機関については、銀行協会などの参加主体による一種の「クラブ財」になっている例がある。こうした運営主体の場合、市場で独占的な地位を占めているケースが多いことから、競争による規律づけが不十分な面があることは否めない。

証券決済機関や資金決済機関等の運営主体のこうした問題を克服するためには、ガバナンスの工夫と競争による規律づけの創出が重要である。すなわち、(1)ガバナンス構造が選択可能となること(具体的には、ガバナンスの有効性やサービス提供の在り方<サービスの提供とコスト回収の完全性等>を評価して、よりよいガバナンス構造を選択できること)、また、(2)株式会社であったとしても、独占の弊害や、株主以外の競争者を排除するなどサービス提供における差別等のマイナスを生じさせないようなガバナンスを確保すること、(3)中央銀行などの独占的なサービス提供者であっても、競争による規律づけを構築すること-参入可能性(コンテスタビリティー)の確保-といった点が必要となる。

わが国でも証券取引所の株式会社化や、証券決済機関などの運営主体見直しの動きがみられる。
それぞれの機能に応じて、組織の特性は異なるが、ユーザー所有の閉鎖的な組織とならないよう、競争的な環境をつくり出し、有効なガバナンスを確保することは、金融市場の効率化のために共通して極めて重要であるといえる。
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