Business & Economic Review 2000年02月号
【PLANNING & DEVELOPMENT】
市町村合併の実態と今後の推進に向けた提言
2000年01月25日 市町村合併・広域連合研究チーム
要約
国民ニーズの多様化、高度化を背景に行政需要が拡大する一方、国はもとより、都道府県、市町村財政の疲弊化が進み、公共サービスの供給が難しくなっている。とりわけ、住民生活と直結している市町村のあり方の再考が求められており、その一環として、政府により市町村合併が推進されている。今般、地方自治体(都道府県、市区町村)の市町村合併に対する認識を把握するため、全都道府県および全国で合併の動きのある市区町村を対象にアンケート調査を実施した。また、具体的な合併効果や問題点を明らかにするため、1987(昭和62)年以降、市町村合併を成功させた全国の12事例(市)に対して、現地ヒアリング調査を実施した。
アンケート調査の結果、都道府県、市町村ともに80%以上が合併の必要性を感じていることが分かった。しかし、合併に対する住民意識が成熟していないことを合併の障害要因とする回答が多く、合併に対する住民意識の啓蒙や認識づくりが必要となっている。また、地域間格差の拡大も障害要因として大きく認識されており、格差是正措置が不可欠といえる。
既合併事例(市)に対するヒアリング調査の結果、主に次のような合併の障害への対応が行われていることが分かった。
・合併後の将来構想を策定して地域の合意形成、住民意識の醸成に役立てた。
・中心部と周辺部の格差が拡大しないよう、周辺部への集中的な投資を実施した。
・首長や議会の反対に対しては、期間限定のポストを臨時的に創設し、議員の任期にも特例を設けた。
・行政サービス低下の懸念に対しては、急激な役所の統合を避けて、旧来の行政区画を活かした支所方式を採用した。
また、合併したことによって以下のようなメリットが発生したとの回答を得た。
・行財政基盤の強化に伴い予算規模が拡大して、大規模投資が実現した。
・行政の効率化が進み、主に管理部門の職員削減が実現した。
・専門的な行政サービスの拡充が実現した。
・生活圏と行政区との一体化により、近隣地域の一体的整備が進んだ。
ただし、合併後も経済団体の合併や公共施設、公共サービスの統廃合は必ずしも進んでいない。また給与体系や昇進ルールの違いに戸惑う声も聞かれるなど、今後の課題も少なくない。
アンケート調査、ヒアリング調査の各結果を受けて、今後の市町村合併推進に向けて以下の提言をする。
・住民に合併についての情報をできるだけ分かりやすく伝え、かつ議論等にも積極的に参加してもらえるようにするには、合併の目的や具体的なメルクマールを明確に打ち出すことが効果的である。
・周辺部と中心部の格差拡大を防ぐには、周辺部に対して集中投資を行い、住民に対して十分に説明を行うなどの対策が有効である。また、市町村の合併の特例に関する法律(合併特例法、99〈平成11〉年改正)に盛り込まれている「旧市町村の地域振興のための合併特例債」「旧市町村区域ごとの地域審議会の設置」などは、激変緩和措置として市町村の積極的な活用が求められる。
・都道府県は、合併に関する研究費助成制度の創設、市町村の各種研究会、協議会等への職員派遣、合併関係自治体間の交渉の調整など、市町村に対して積極的にサポートしていくべきである。
・合併にあたって作成する「新市建設計画」がどこまで実現したかについてモニタリングする制度を導入すべきである。政策評価の導入が注目されている昨今であるが、合併行為を政策評価の対象として位置づけ、その効果や成果を測定する工夫を行うことも、これからの行政活動には不可欠といえよう。