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Business & Economic Review 2000年01月号

【論文】
わが国経済の中期展望(2000~2003年度)-二極化経済の確執

1999年12月25日 調査部


要約

わが国の景気は99年春頃を底に循環的には回復局面に移行。その要因は、(1)財政・金融面での思い切った政策効果の顕在化、(2)アジアを中心とした海外情勢の好転、(3)マインド回復を主因とする個人消費の持ち直しに加え、(4)在庫調整の進展・2000年問題への対応を受けた在庫積み増し等。2000年入り後も、「経済新生対策」の効果顕在化により当面緩やかながらも回復傾向が持続し、99年度の実質経済成長率は1.0%と3年ぶりにプラスに転じる見込み。

2000年度以降の中期的なわが国経済の姿を展望するにあたり、まずは政策需要・外需等「外生的需要」についてみると、その景気牽引力に期待することは困難な状況。

【外需】…(1)世界景気のアンカーであるアメリカ景気が現在の高成長を維持することは困難なこと、(2)グローバルな産業調整が進むなか輸入増加が国内生産を抑制するファクターとなること、等を背景に外需の景気押し上げ効果は低下の方向。

【政策需要】…(1)地方財政の悪化を背景に地方の公共投資が下振れする可能性、(2)国債累増を背景に大規模な補正予算編成は困難なこと、等を背景に公共投資の景気浮揚力は限界に。

結局、わが国経済が持続的回復を実現するための条件は、国内民需部門の自律回復力の復元であり、それが可能となるためには、産業再生の実現が不可欠。

産業再生を達成するためには、(1)事業再編・経営合理化、(2)新産業・新事業創造、の双方に取り組む必要があるが、まずは前者に関して、設備、人件費、債務のいわゆる「3つの過剰」問題の調整終了時期について分析を行うと、以下の通り。

【設備調整】…情報関連分野ですでに投資を増やす動きはあるものの、全産業ベースで調整に目処がつくのは2001年前半に。

【人件費調整】…少なくとも2000年中に調整が終了する可能性は低く、成長率低迷が続く場合、2002年度いっぱいかかる見通し。

【債務調整】…バブルの影響を色濃く受ける一部業種を除いても、設備調整同様、2000年中に目処がつくことは期待薄であり、2002年末頃までかかる可能性。

一方、新産業・新事業創造についてみると、新しいリーディング産業としてのIT産業が、98年後半以降成長を加速させる方向。企業の情報化投資や個人のパソコン購入が急拡大するなか、電子商取引が立ち上がりつつある。また、99年度に入って新規開業件数も増加に転じる動き。

今後数年間のわが国経済の姿は、各種調整が遅れ縮小傾向を余儀なくされている成熟分野・低付加価値部門である「後進部門」と、新しい成長をリードする新産業分野・高付加価値部門の担い手である「先進部門」が綱引きを行う「二極化経済の確執」の状態が続く見通し。そして、「先進部門」の成長スピードおよび「後進部門」の調整進捗ペースにより、3つのシナリオが描ける。

【現状維持シナリオ】…公共投資追加を中心とした従来型政策スタンスが維持される結果、景気底割れは回避されるものの、2000年度後半以降緩やかな後退局面へ。景気底入れ後も低成長率が持続し潜在成長率は1%台半ばまで低下。

【新産業牽引シナリオ】…政府が抜本的政策転換を行う結果、IT産業を中心とした新産業・新企業の立ち上がりが2000年度後半以降本格化。潜在成長率は3%近くまで上昇。

【調整急進展シナリオ】…円急進・株価下落を契機に不採算部門からの撤退・設備廃棄など後ろ向きの産業調整が急進展。

新産業主導で産業再生を達成し、潜在成長率を回復していくためには、成熟産業・低付加価値部門から新規産業・高付加価値部門に、資本・労働力等生産要素を大胆にシフトすることに、まずもって個々の民間企業が積極的に取り組むことが不可欠。一方、政府としては、こうした民間の取り組みを強力に支援すべく、従来型の「既存産業維持型政策」を「新産業創造支援型政策」に抜本的に転換することが急務。
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