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RIM 環太平洋ビジネス情報 2000年4月No.49

生物多様性保全の経済的価値-インドネシアのケースより

2000年04月01日 さくら総合研究所 主任研究員 渡辺幹彦


要約

地球環境問題の一つである「生物多様性」の保全の重要性が、ますます高まっている。同問題を扱う国際条約「生物多様性条約」の第5回締約国会議が、本年5月にケニアにて開催される予定となっており、生物多様性から得られる利益の分配や保全対策実施のための資金メカニズムの制度設計が進展することが見込まれる。

企業活動は、生物多様性の保全と関わりを持っている。製薬業、農業・種子産業、バイオテクノロジー産業などは、保全された生物多様性を資源として利用し、利益を得ることができる。一方、鉱業、石油業などは、立地や輸送において、生態系の破壊を伴うことがあるので、立地条件の考慮や環境アセスメント規制への対応というコストを負担する。林業、漁業については、高付加価値資源としての木材種・魚類は、生物多様性の恩恵であり、これらにより利益を得られるものの、過剰伐採・漁獲は生物多様性を破壊するので、条件付きで生物多様性から利益を受ける業種である。

商業ベースでの事業モデルとしては、コスタリカにおける米国製薬企業マーク社の例がある。同社は、生物多様性保全のために大学、国立公園に出資するとともに、そこからの資源を利用する権利を得ている。生物多様性有効利用の事例として成功が期待されている。

アジアは生物多様性が豊かな地域であり、とりわけインドネシアは「メガ・ダイバーシティ国家」と呼ばれ、注目を集めている。スマトラ島で、ケリンチ・セブラト国立公園の生物多様性保全プロジェクトが、世界銀行によって実施されている。同プロジェクトにおいては、生物多様性保全から得られる経済的価値(薬品開発、エコ・ツーリズム、水域系保全など)が、保全の実施により失われる経済的価値(木材伐採や鉱物資源開発)を上回っている。

生物多様性資源は乏しいが資金・技術が豊かな先進国と、資金・技術は乏しいが生物多様性資源は豊かなアジアの途上国との間で、双方にとってメリットとなるような利益分配制度の設計が望まれている。
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