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RIM 環太平洋ビジネス情報 2000年2月No.48

欧米自動車メーカーのアジア展開と戦略的提携

2000年02月01日 さくら総合研究所 副主任研究員 森美奈子


要約

1998年のダイムラー・クライスラーの誕生以来、世界の自動車メーカーの間でM&A(企業の合併・買収)や資本提携などの戦略的提携が活発に行われている。とりわけ、99年に入ると、これまで主として欧米自動車メーカーの間でみられた合従連衡の動きが、日本や韓国の企業を巻き込んで、よりグローバルな展開をみせるようになった。戦略的提携の目的は、(1)市場の確保(グローバル化への対応)、(2)製品ラインの拡充、(3)技術の共同開発(または技術獲得)に大別できるが、近年の戦略的提携において、最も大きな要因となっているのは、環境や安全に対応した次世代技術の開発である。

近年、欧米企業の多くが、アジア事業を強化する方針を打ち出している。欧米企業のアジア市場でのシェアは、今のところ小さい。しかし、今後は、90年代半ば以降に発表された事業が本格化するうえ、戦略的提携を生かしたアジア展開が具体化してくることが予想される。欧米企業のアジア展開は、アジア企業との提携を活用する企業(ゼネラル・モーターズ、フォード、ボルボ(トラック)、ルノー、ダイムラー・クライスラー)と、単独で取り組む企業(フォルクスワーゲン、フィアット)とに分けられる。

GMとフォードは、今後、戦略的提携を活用しながら、アジアの数多くの国で生産を本格化させる計画である。GMは、インド、中国、タイに年産10万台以上の生産拠点を構える構想を持ち、これら3拠点は、2000年以降に本格的にオペレーションを開始する。加えて、いすゞ、スズキ、富士重工との戦略的提携によって、アジア市場向け製品を共同開発し、日本を含むアジアでのシェア拡大を目指す計画である。フォードは、韓国を除く9カ国ですでに生産を行っているが、うち5カ国は96年以降に生産を開始した新しい拠点である。マツダとの間では、タイでの合弁事業が軌道に乗ってきた。日本でも、マツダとフォードのブランドイメージを差別化し、フォード車の販売を拡大する方針である。

欧米企業のアジア事業の積極化は、(1)部品メーカー、(2)日本企業、(3)アジア諸国の自動車産業政策に、次のような影響を与えよう。まず、部品メーカーは、自動車メーカーのグローバル・ソーシングにより、グローバルな競争に直面することになる。次に、日本企業のアジア戦略も、戦略的提携の動きを抜きにしては考えられない状況となってきた。提携をすることなく単独で事業を進める日本企業は、これまでアセアンを中心に築いてきた分業体制を生かしながら、競争力を強化しようとしている。こうした中で、アジア諸国は、外国企業を誘致・活用しつつ、地場産業の発展につなげるという自動車産業政策を求められている。

自動車メーカーは、グローバルなレベルで、効率的で競争力のある生産体制を築こうとしている。アジアにおいても、こうした動きに連動させる一方で、現地の市場特性にも対応した生産体制の構築が求められており、戦略的提携もそれを実現する1つの有力な手段であると考えられる。
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