RIM 環太平洋ビジネス情報 1999年10月No.47
韓国の資本市場改革と産業の動向
1999年10月01日 さくら総合研究所 真崎修
要旨要約
1997年暮れに波及した経済危機を契機として、韓国は本格的な構造改革に乗り出した。従来の成長パターンの特徴であった、政策金融などによる保護・育成の色彩の強い政策を修正し、市場の資源配分機能を重視した制度を導入した。
韓国は、経済発展に必要な資本を国際金融市場に依存する度合いを高め、従来の外国為替規制や資本規制を緩和した。外国人でも、原則として韓国企業の株式を全額買い付けることができるようになった。また、韓国企業の財務内容を明示するため、国際会計基準の導入が図られるなど、外国人投資家にとって投資しやすい環境が整備された。一方、競争力のない企業・銀行は、早めに整理され、不良債権処理も迅速であったため、財政負担も比較的軽く、また資源を成長分野に振り向けることが容易となった。
新しい金融商品の取引市場も創設されつつある。資産担保証券(ABS)市場の創設によって、企業などの売り掛け債権など無形資産も、証券化のうえ、売却できるようになった。ABSは、資産内容が良好でさえあれば発行できるため、信用状態が安定していない新興企業にも資金調達の道を開くことができるほか、不良債権買い取り機関の資産流動化の手段としても利用されつつある。また、景気対策のために発行した赤字国債は、国債市場の発展に貢献したが、為替の先物・オプション市場などのデリバティブ市場についても、本格的な整備が図られている。
資本市場を開放し、透明性を高めた結果、外資流入も増えた。98年に、韓国は過去最高の直接投資受け入れ額を記録したが、証券投資資金の流入も著しく、韓国証券取引所上場企業の株式の約2割は、外国人に保有されることとなった。
外資を含め、投資資金は、情報通信関連のハイテク産業や、金融サービスなど知的サービス業などに向かった。また、技術集約型のベンチャー企業も数多く生まれ、こうした企業の資金調達の場である店頭市場(KOSDAQ)に登録を予定する企業も急増した。
一方、自動車産業に代表される重化学工業は、統廃合を余儀なくされている。従来より、国内市 場規模が比較的小さい韓国においては、重化学工業分野における規模の経済の恩恵を受けにくく、かつ同業のメーカー数が多いため、採算を確保することも容易ではなかった。重化学工業の分野においては、企業数が整理され、業界上位企業の占めるウェイトが増している。生き残った企業にとっては、収益を上げやすい環境が整うであろう。
韓国の政策当局は、IMFの支援を得、また米系民間金融機関をアドバイザーとして受け入れるなどの過程を通じて、最新の国際金融情勢に対する理解を深めつつあり、21世紀には、近代的な資本市場が形成されることとなろう。