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RIM 環太平洋ビジネス情報 1999年10月No.47

通貨危機前後のアセアン諸国におけるマネーサプライの変動

1999年10月01日 さくら総合研究所 坂東俊輔


要約


通貨危機の原因の一つとして、マネーサプライの増加が指摘されている。アセアン諸国では、ドル・ペッグ制の下で、海外から大量の短期資金が流入した。一方、国内市場においては、不胎化政策が十分に行われない状況の下で、過剰なマネタリー・ベースが供給された。その結果、実質GDPと実質マネーサプライ(M2)の動向をみると、1997年7月の通貨危機以前の時期においては、後者の伸び率が前者を上回っており、過剰流動性が観察できる。

貨幣乗数からアセアン諸国におけるマネタリー・ベースとマネーサプライとの関係についてみると、フィリピンを除いては、通貨危機以前は貨幣乗数が一定であったと考えられる。したがって、通貨危機以前は、主にドル・ペッグ制維持のためのドル買い支えによるマネタリー・ベースの供給が、貨幣乗数倍のマネーサプライの増加をもたらした。このことは、アセアン諸国の中央銀行のバランスシートからも確認できる。一方、通貨危機後の動向をみると、貨幣乗数は一定ではなく、不良債権などの問題に苦しむ銀行の貸し出し姿勢の変化が貨幣乗数の低下をもたらし、マネーサプライの変動をもたらしたと考えることができる。

通貨危機以前の時期においては、マネタリー・ベースの供給がその貨幣乗数倍のマネーサプライを創出した。このようなマネーサプライの増加分は、投資資金として貸し出されたものと考えられる。そこで、アセアン諸国の限界資本係数(ICOR)を計算すると、その値が上昇しており、投資の効率性が低下していたことがわかる。また、株価とマネーサプライの間にも相関関係がみられた。

通貨危機後のアセアン諸国(マレーシアを除く)は変動相場制に移行し、ドル・ペッグ制維持のためのドル買い支えという金融政策上の対外的制約が緩やかになっている。アセアン諸国において、金融政策の機動性と有効性は、以前にも増して高まったと考えられる。
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