RIM 環太平洋ビジネス情報 2000年7月No.50
再生に向けて正念場を迎えるインドネシア経済
2000年07月01日 さくら総合研究所 上席主任研究員 向山英彦
要約
インドネシア経済の回復が遅れている。この根底には政治的不安定がある。同じく通貨危機の影響を強く受けた韓国やタイと異なるのは、韓国では輸出が景気回復において決定的な役割を果たし、またタイでは財政支出が景気の下支えの役割を果たしているのに対し、インドネシアの場合には景気の牽引役がなかったことである。
インドネシアでは、輸出が通貨危機後しばらくの間低迷する状態が続いた。その要因には、(1)貿易金融の麻痺、(2)ルピアの大幅下落による原材料輸入の困難化、(3)電機・電子製品の比重の低さ、(4)華僑・華人による事業活動再開の遅れがある。
また、財政面での制約から財政支出の拡大には限界があり、したがって財政政策の効果も限定的となっている。今年1月には、IMFとの合意により、2000年度の財政赤字額をGDPの4.8%に圧縮する目標が立てられた。
停滞していた経済であるが、ここにきて回復に向けての明るい兆しがみられる。実質GDP成長率は99年第2四半期から4期連続でプラスとなっている。この背景には、輸出が増加傾向にあることや消費が回復してきていることがある。
今後も輸出と消費の回復により、景気は回復していくと予想されるが、民間設備投資や外国直接投資の伸びがあまり期待できないことから、回復は力強さに欠けるだろう。 2000年も3%強の成長にとどまるものと予想される。
またインドネシア経済が今後、順調に回復していくためには、金融システムの再建を含む構造改革や民間企業のリストラなどを一層進めていくことが求められる。そして、それが可能になるのも政治的安定とリーダーシップの確立が必要なのである。