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RIM 環太平洋ビジネス情報 2004年4月Vol.4 No.13

エレクトロニクス製品のグローバル供給と市場統合
東アジアにおける貿易拡大のメカニズム

2004年04月01日 環太平洋研究センター 竹内順子


要約

  1. 東アジアはエレクトロニクス製品(以下、電子製品)のグローバルな供給地域として大きな位置を占めている。特に、東アジアへの生産集中が顕著なのは拡大期にあるデジタル機器とその部品であり、そのなかには数年前まで日本が生産の中心であったものも少なくない。モジュラー化の進展や世界貿易機関(WTO)の情報技術協定(ITA)に基づく関税障壁の低下が、東アジアにおける電子製品の生産の増大を促している。

  2. 東アジアの電子産業は、輸出加工区(EPZ)の導入を契機にオフショア型の産業として発展してきた。外国企業による加工貿易を優遇する制度の中で、生産主体としては外国企業に、資本財や中間財の供給は輸入に依存する輸出産業という電子産業の原型が築かれた。1980年代後半には、大幅な円高を受けた日本企業の生産移転の拡大、韓国と台湾企業による海外投資の増加、投資受け入れ地域の多様化などによって生産地域が広がった。そのなかで、大きなインパクトをもたらしたのは中国の大規模な投資受け入れとオフショア生産地化であった。

  3. 直接投資を通じた生産の移転は、投資国と投資受け入れ国、あるいは投資受け入れ国間をつなぐ調達、供給網を発達させた。それに伴って、電子製品貿易に占める東アジア域内の割合が上昇し、日本を含む拡大東アジアは、貿易の域内完結度が世界でも最も高い地域となっている。域内貿易拡大の原動力は、全体の約8割を占める中間財であり、急速に生産を拡大している中国である。1999~2002年の東アジアにおける輸出増加分の約4割が中国によって吸収されており、中国は域内の輸入国として突出した存在になりつつある。ただし、中国を含めて域内国のいずれもが最終財の輸出では域外依存度が高く、域外向けの最終財の輸出が増加する時には域内貿易も増加するが、減少する時には域内貿易も減少するという構造は変わらない。

  4. デジタル家電などの市場拡大を受けて、東アジアの電子製品の輸出は今後も増加することが見込まれる。中国を中心とする量産向けの地域がグローバルな供給を担い、これらの地域に対して日本、韓国、台湾が電子デバイスの供給者としての役割を果たすものとみられる。しかし、全ての国が輸出拡大の恩恵を受けられるわけではなく、中国による生産拡大や国産化の進展は、近隣諸国に対して構造転換を迫る圧力となっていくものとみられる。電子産業にとっての市場統合は、こうした構造転換の促進という点で意義が大きい。立地の選別を強めるであろう企業に対して、各国政府は自らの優位性を再検討し、差別化を図る必要がある。それが長期的には東アジアの産業構造を多様化させ、地域の安定性を高めていくものと考えられる。
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