コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 2002年1月Vol.2 No.4

中国に集中する東アジア向け直接投資

2002年01月01日 今井宏


要約

  1. 2000年の東アジア向け直接投資額(国際収支ベース)は1,373億ドルと、過去最高を記録した。東アジアへの直接投資は、1990年代前半はコンスタントに増加した後、通貨危機以降、伸び悩み傾向がみられたが、2000年は急回復した。

  2. これを国・地域別にみると、二極化傾向が一層強まっている。香港向け直接投資は急増し、中国を抜いて、東アジアで最大の直接投資受け入れ国・地域となった。香港向け直接投資が急増した背景には、香港自体の要因というよりも、それ以上に中国投資のゲートウェイとしての香港の存在が改めてクローズアップされたことがある。中国向け直接投資は、伸びは鈍化したとはいえ、絶対額は依然大きく、東アジアのなかでのシェアは約30%とあいかわらず高い。また、韓国、シンガポール、台湾のNIEs諸国・地域が、東アジアのなかで相対的に投資受け入れ額が多かったのに対し、ASEAN4カ国は、マレーシアが好調だったものの、タイ、フィリピンは受け入れ額が伸び悩んでおり、インドネシアでは流出が続いている。

  3. 香港と中国を合計した直接投資受け入れ額は、2000年には1,052億ドルに達し、東アジア向け直接投資額の76.6%を占めた。このような中国・香港への投資の集中化傾向は、2001年に入りさらに顕著となっている。

  4. グローバル規模での企業間競争の激化に伴い、投資先の選別基準が厳しくなっており、市場確保型投資の活発化に加え、競争力のある製品を製造するための最適生産拠点を求める動きが強まっている。各国の投資環境の違いが、投資受け入れに大きな影響を与えており、(1)投資に関する規制緩和、(2)投資優遇策、(3)インフラの整備、(4)市場規模、(5)労働力、(6)産業の集積度、(7)政情の安定などが、企業の投資判断基準となった結果、優位性を持つ中国への投資集中が加速している。

  5. 今後も、巨大な潜在市場を持ち、生産拠点としても競争力のある中国とそのゲートウェイ役である香港への投資集中が続くものとみられる。

  6. しかし、現在の中国への投資集中は、今後のさまざまな環境の好転を期待し、それを先物買いしている部分が少なくない。したがって、中国側の状況の変化によっては、中国向け投資も大きく影響を受ける可能性がある。具体的には、(1)投資規制緩和や市場開放、(2)市場の将来性、(3)政情の不安定化リスク、という3点についてリスク要因がある。このようなリスクをしっかりと踏まえたうえで、今後の中国への投資を進めていく必要があろう。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ