RIM 環太平洋ビジネス情報 2002年4月Vol.2 No.5
中国の輸出競争力向上と東アジアにおける競合・補完関係の変化
2002年04月01日 環太平洋研究センター 竹内順子
要約
中国の輸出急増を目のあたりにして、アジア諸国のみならず、日本においても中国脅威論が盛んに唱えられている。確かに、OECD加盟国の輸入総額に占める中国のシェアが5%を超える品目(以下、有力輸出品目)は90年代を通じて大幅に増加したのみならず、対象品目も雑製品から機械類、繊維素材へと広がっている。しかし、OECD加盟国の輸入相手先別シェアをみると、中国のシェアがあらゆる分野で日本や他のアジア諸国を上回っているわけではない。特に、日本には中国を上回るシェアを維持している品目が多い。一方、台湾、韓国は、OECD市場で中国と競合し、多くの品目でシェアが低下した。しかし、その一方で、化学製品、合繊、電子部品などの中間財の対中輸出が拡大しており、中国のアパレル、電子製品の輸出拡大から間接的な恩恵を受けている。
ASAEN4(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ)の有力輸出品目の多くは中国と競合している。軽工業品では、原材料に恵まれた品目を除くと、すでに中国のシェア優勢が明らかになっている。中国が開発に注力している内陸部への軽工業の移転が実現すれば、中国の競争力はさらに長期間にわたって維持されよう。93年以降の外国直接投資の流入額では中国はASEAN4を大きく引き離しており、ASEAN4は外資を牽引役とした新たな輸出産業の生成という面でも中国よりも不利な条件下にある。ただし、電子・電気製品ではASEAN4と中国間で産業内分業が進展しつつあるなど、産業によっては補完関係が構築されていることがうかがえる。
アジア諸国や日本にとっての今後の問題は、中国における中間財の国産化の進展が挙げられる。中国国内における中間財の需要が拡大してきたことから、外資系企業も対中投資に積極的になっている。中国における中間財の国産化の進展にともない、各国の対中輸出も変化を迫られよう。今後は中国の市場、産業構造などの変化を注視しつつ、補完関係を再構築していく構造転換の能力が、各国の競争力の水準を大きく左右することになろう。