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RIM 環太平洋ビジネス情報 2002年4月Vol.2 No.5

経済的相互依存を強める台湾と中国

2002年04月01日 向山英彦


要約

台湾経済は2001年に入り急速に悪化するまでは、比較的安定した成長を続けてきた。最近の経済悪化には、台湾経済の構造変化も関係していると考えられる。台湾経済は90年代に入りグローバル化が進み、輸入を誘発しやすくなっている。実際、90年から95年にかけて、国産財の中間投入率が低下する一方、アジア諸国からの投入率が上昇した。この結果、台湾で生産が増加しても、経済全体への生産誘発効果が小さくなっている。

経済のグローバル化を推進したのは、台湾企業による海外直接投資である。海外直接投資は80年代後半に比較優位の低下した労働集約製品に始まり、90年代後半にはエレクトロニクスおよびIT関連製品などの分野に広がった。直接投資は当初ASEAN諸国に向かったが、次第に中国へ集中していった。90年代は、海外への生産シフトが拡大する一方、台湾では産業の高度化が進んだ。

中国への生産シフトが増加した背景には、台湾政府が中国への間接投資を認可したことや中国における改革・開放政策の加速がある。生産シフトは近年、エレクトロニクス製品やコンピューター関連機器など比較的高度な分野が中心となり、立地先も華南地域から華東地域へとシフトしてきている。また生産機能だけではなく、研究開発機能もシフトしてきている。こうした台湾から中国への生産シフトは、華南地域の産業集積の形成や地場企業の成長につながっている。

生産シフトを通じて、台湾と中国との経済的関係が緊密化している。貿易面ではまず、2000年に台湾の香港・中国向け輸出が対米輸出を上回った。輸出面でみた貿易結合度をみると、台湾と香港の結合度は高水準にある上、90年代を通じて上昇している。また台湾から中国への中間財や機械設備の輸出が増加する一方、最近では中国から電機・電子機器関連製品を輸入する傾向がみられ、相互依存が強まっている。

中国への生産シフトは台湾企業の競争力維持・向上をもたらしているほか、中間財や機械設備の輸出増加、さらには産業高度化促進などのプラス効果をもたらしている。その半面、台湾域内における生産誘発効果を低下させ、投資率の低下につながっていると考えられる。ただし、海外生産シフトの雇用への影響については、マイナス効果とプラス効果を総合的に評価していく必要がある。

WTO加盟を契機に、台湾政府による対中投資および対中輸入規制が緩和されてきている。また将来的には、直接の通商・通航も開始されていく。これらが実現していくためには多くの克服すべき問題が存在しているが、台湾から中国への生産シフトが不可逆的な流れとなっていることを考えれば、今後、台湾経済と中国経済の一体化はさらに進むものと予想される。
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