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RIM 環太平洋ビジネス情報 2003年10月Vol.3 No.11

グローバル化で変わる東アジアの景気変動

2003年10月01日 向山英彦


要約

  1. 今日の東アジア経済にみられる特徴の一つにグローバル化の進展がある。東アジア諸国は対外志向型の発展戦略をとりながら、グローバル化のメリット(貿易と国際資本移動の利益)を受けて成長を遂げた。しかし通貨危機はそれまで比較的順調に発展してきた東アジア経済に内包されていた問題点、すなわち経常収支の赤字、固定相場制と資本取引の自由化、脆弱な金融システムなどを顕在化させた。

  2. 通貨危機からの教訓はグローバル化のメリットとそれに内包する問題点をきちんと認識し、国内におけるグローバル化を漸進的に進めていくこと、それと同時に国・地域レベルにおいてセーフティネットを整備していくことである。

  3. グローバル化の進展により、東アジア経済はグローバル経済の影響を受けることになった。その波及経路としては貿易、直接投資、為替、金融などがある。東アジア地域全体をみると、a.輸出志向工業化へ転換した60年代、70年代には貿易を通じて輸出相手国の景気変動の影響を受けたこと、b.80年代後半は、円・ドルレートの変動と直接投資を通じた影響を強く受けたこと、c.90年代は金融・資本市場の自由化の進展により、その経路を通じた影響が大きくなったこと、d.近年では中国の台頭もあり東アジア域内の自律性が高まっていると思われること、などが指摘出来よう。

  4. 東アジア経済がグローバル経済の影響を受ける度合いが高くなったとはいえ、その内容は国により異なる。それは貿易依存度、輸出(産業)構造、為替制度や資本取引の自由化などの違いによるものと考えられる。

  5. 中国は中期的に7%以上の成長が続くことと輸入比率(輸入額/名目GDP)が上昇すると考えられることから、そのアブソーバー機能は今後さらに強まるであろう。このことは、東アジア地域の経済的相互依存を強化し、より実体のあるものにしていく。これこそが経済的な観点からみた中国台頭の歴史的意義といえる。

  6. 以上を踏まえ、域内の景気変動に関して実証分析した。韓国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、中国、日本、アメリカの8カ国の実質GDP(年ベース、1980年を100とした指数)をサンプルにした。ホドリック・ニュースコット・フィルターでトレンド除去した循環成分を抽出し、循環成分のトレンドからの乖離率を求めてその相互相関係数を算出した。相関係数は1980~89年、90~95年、通貨危機後の99~2002年の3期間に分けて算出した。その結果、1990~95年にはその前の期間と比較し、韓国、台湾とアメリカとの相関係数が低下し、東アジア諸国と日本との相関係数がマイナスとなったこと、また東アジア諸国間の相関係数が上昇したことなどが明らかとなった。

  7. 近年の中国の周辺国に及ぼす影響力を把握するために製造業生産の相互相関係数を求めると、韓国、台湾、中国との連動性が高くなっていることがわかった。また簡単なVARモデルの分散分解でも韓国、台湾への中国の影響力の強さが検証出来た。
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