コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 2003年4月Vol.3 No.9

中国の労働需給と失業推計
2020年までの展望

2003年04月01日 今井宏


要約

  1. 公式統計では中国の2001年末の都市部失業者は681万人で、失業率は3.6%であった。しかし、これには本来失業者とすべき下崗労働者や企業内の余剰労働力が含まれていない。これらを加えると、都市部における失業者および潜在失業者は3,022万人に達する。一方、2001年末の農村部における余剰労働者数は1億7,112万人で、これは農村部就業人口の34.9%に相当する。

  2. 農村部から都市部への出稼ぎ労働者は8,000万~1億人に上るとされる。中西部地域から流出し、それが東部沿海地域に流入するという動きが多い。

  3. 中国の将来人口を推計すると、2001~2005年に年平均904万人増、2005~2010年に同824万人増と予想される。その後も人口の増加は続くものの、増加率は次第に低下する。新規労働力供給は、2006~2010年が年平均824万人、2011~2015年が同663万人、 2016~2020年が同522万人となり、今後も大きな規模で増加することが予想される。

  4. 経済成長率と就業者の増加数との関係をみると、近年、経済成長に見合った就業者の増加が実現していない。91年~2001年には、実質GDP成長率1%ポイントの伸びに対し、就業者の増加率は0.12%であった。これをもとに予測すると、2001~2005年の就業者の増加は3,787万人となるが、その後、2016~2020年には3,514万人の増加へと縮小する。

  5. 新規労働力供給と需要とを比較すると、2010年までは供給が需要を上回る結果、就業者数はマイナスとなり、失業者がむしろ増加することが予想される。しかも、2001年末時点ですでに2億人を超える失業者および潜在失業者が存在することを考慮すれば、2020年まで労働力の需給状況に大きな改善は期待出来ない。

  6. しかも、今後の労働力需給に影響を与える要因として、a.WTO加盟、b.国有企業改革の進展、c.農村部から都市部への出稼ぎ労働者の流入がある。これら諸要因の影響で、雇用情勢は一段と悪化する可能性がある。

  7. 失業問題の深刻化は、中国の経済面および政治社会面において、今後様々な影響を与えることとなろう。このため、問題の改善のためには、単なる労働政策上の対応では不十分であり、a.高い水準の経済成長の持続、b.民間セクターの発展振興、c.外資導入の促進、d.失業者および労働者のレベルアップ、 e.社会保障制度の早急な整備、などが必要となっている。

  8. 今後失業問題の深刻化が予想されるなかで、政府は難しい舵取りを迫られている。失業者の急増や社会保障制度の不備は、すでに社会不安を増大させつつある。これを放置すれば政権の基盤を揺るがす大問題に発展する危険性もあり、政府の対応が難しくなっている。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ