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RIM 環太平洋ビジネス情報 2003年1月Vol.3 No.8

中国における貿易・投資の自由化と産業構造調整

2003年01月01日 環太平洋研究センター 竹内順子


要約

  1. 中国は2001年12月の世界貿易機関(WTO)加盟に伴い、2002年年初より、関税率の引き下げや輸入制限措置の緩和などを開始した。
    改革開放後、中国の製造業部門は外資の急激な流入や私営企業の発達によって大きく変貌した。
    しかし、計画経済下で推進されてきた重工業優先政策に起因する問題は依然として残っている。
    国有企業の比重が高い自動車、化学、鉄鋼、一般機械などの産業は、比較優位を持たない品目を多く抱えており、国有企業改革の進展が、自由化によって生じる今後の産業調整にも大きく影響することになろう。

  2. 地域の雇用や財政の担い手としての役割が大きい国有企業の改革には、大きな困難を伴う。 しかし、中国政府は、今後基本的に、産業育成に対する直接的な関与を減少させ、非効率な国有企業や産業の衰退・淘汰を市場に委ねる方針である。
    また、中小国有企業のみならず、一部の大型国有企業についても民営化が推進され、政府の関与は、産業インフラの整備など、間接的な支援において強化される。
    ただし、自動車、機械、鉄鋼、化学などの産業では、少数の国有企業を主力企業という形で残し、国際競争力を持つ大企業へと育成していく方針が維持される見込みである。
    主力企業の競争力向上のために外資の活用が図られるが、それには、外資の影響力増大を容認し、市場経済に適した企業統治を実現していく必要がある。

  3. 90年代に非国有セクターが高い成長を遂げたことで、a.生産や雇用における国有セクターの比重が相対的に低下していること、b.非国有セクターを主な担い手とする組立加工業の著しい拡大によって、素材に対する需要が拡大したことは、今後の産業調整をみるうえで明るい材料である。
    とくに、内需の拡大は外国企業の中国に対する関心を高め、主力企業の改革に外資を取り込むことを容易にするからである。
    一方、多数の国有企業が市場の選別に委ねられることから、新たな失業者が生み出される可能性は高い。
    a.地域の雇用情勢の著しい悪化、b.主力企業の業績悪化の程度によっては、自由化の進展が鈍る可能性もあろう。

  4. 社会あるいは制度的な不安定さが露呈し、経済の減速につながると、失業の増大や企業収益の悪化などに歯止めがかからず、スパイラル的な経済の落ち込みが続くという怖さがある。
    中国政府にとって、国内経済の安定を維持できる自由化の速度と範囲を見定めていくことが、重要となっている。
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