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Business & Economic Review 2001年05月号

【POLICY PROPOSALS】
銀行業の将来像と監督政策のあり方-機能的視点と国際的潮流

2001年04月25日 調査部 金融・財政研究センター 翁百合


要約

最近続いているインターネット銀行やコンビニ銀行など、新しいタイプのニッチ型銀行の参入は、情報通信革命を背景として、銀行の提供してきた決済機能を切り離して提供することが可能となってきた環境面の変化が背景にあり、機能の分解というトレンドと合った自然な動きである。一方で、既存銀行の中にはメガバンク化で対応しようという動きがみられるが、このビジネスモデル間の競争は、(1)コスト効率性(範囲の経済性、規模の経済性、費用効率性等)、(2)イノベーションによる顧客基盤ひいては収益機会の広がりの程度、(3)リスク分散の程度を競うものとなろう。メガバンクについては、組織形態のあり方が、ニッチ型バンクについては、リスク管理が大きな課題となろう。こうしたビジネスモデル多様化にしたがって、業態としての銀行業の外延もはっきりしないものとなろう。

銀行本体が担える業務範囲について考えると、機能を発揮するのに最も適切な金融機関の体系を展望して検討する必要があり、(1)金融サービスの発展可能性、(2)顧客利便性、(3)リスク管理可能性、加えて、アメリカで認められているようなエクセス・キャパシティー原理の適用を基準として考えていく必要がある。ただし、情報技術革新の流れは、業態の概念を大きく変えているため、決済機能や、資源の移転、資源のプール化、リスク管理といった金融の基礎的なサービスを提供する産業を業態横断的に金融サービス業と捉え、その業務範囲を早急に考える必要がある。その際も、市場や合理的に予想される変化に合致しているか、といった機能的視点を重視していく必要がある。

このように銀行業のビジネスモデルが多様化していくと、規制・監督のあり方も大きく変化していく必要に迫られよう。最近のバーゼル銀行監督委員会等をはじめとする国際的な動きをみると、ビジネスモデルの多様化に対しては、(1)銀行の内部統制を充実させる、(2)新しいタイプのリスク(オペレーショナル・リスクおよび金利リスク等)を各銀行が正確に把握し、これを管理する、(3)当局は、金融機関の自己責任を重視した監督のあり方を工夫し、さらにこれが裁量的にならないよう情報開示する、(4)自主的な情報開示による市場規律を発揮させる方向で監督当局と金融機関が環境を作っていく、といった方向の必要性が浮かび上がる。また、ビジネスモデルの多様化にふさわしいセーフティネットのあり方としては、機能的な視点に立ち、銀行が担ってきた機能を銀行業の外側にも広げていくことによって、セーフティネットを絞るという視座が必要である。
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