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Business & Economic Review 2001年04月号

【STUDIES】
東経110度衛星放送のあるべき姿

2001年03月25日 調査部 メディア研究センター 西正


要約

放送や通信に使われる衛星は、常に日本上空にある静止軌道衛星であるべきことから、赤道上空に打ち上げられる。すなわち、どの衛星も緯度は0度となるため、衛星を区別するには経度で表示されることになる。そもそもわが国では、これまで東経110度衛星と言えばBSのことを指していたのだが、昨年同じ軌道位置に新たにCSが打ち上げられた。同じ軌道位置にあるということは、それぞれによって行われる放送サービスは、1本のアンテナ、一つの受信機で視聴できることから、東経110度衛星が俄然クローズアップされるようになった。同じ東経110度上にBSとCSが存在するのであるから、BSデジタル放送のあり方を論じていく際にも、新たに登場したCSとの相関影響を考慮し、両者の相乗効果が発揮できるように、ということが重視されるべきことになる。

BSデジタル放送の売り物は、デジタルハイビジョン放送とデータ放送のニつである。 デジタルハイビジョン放送の評価は大きく分かれるようだが、実際に同じ映像をデジタルハイビジョン放送と標準放送とで見比べてみると、デジタルハイビジョン放送の方がより奥行きが感じられ、臨場感溢れるものとなっている。デジタルハイビジョン放送を楽しむには新たにデジタルテレビを購入する必要があるが、その普及を促すためには、ハイビジョンの特性を生かした番組を豊富に提供することが条件となる。ところが、ハイビジョン番組の制作には、標準放送番組の1.5倍程度のコストを要する。放送開始からしばらくの間は、そう多くの視聴者数を確保することは難しいだけに、視聴者数が少ない⇒広告収入が伸びない⇒魅力あるハイビジョン番組が制作できない⇒視聴者が増えない、という悪循環に陥ることが懸念される。

もう一方のデータ放送を、デジタル放送の目玉商品として位置づけていくには、データ放送ならではのソフトやサービスを、少しでも早く多く取り揃えていくことが必要である。データ放送そのものは利便性の高いサービスであるが、視聴者にとっては不慣れなサービスであることも確かであるため、その魅力をアピールしていくための方策が欠かせない。データ放送サービスによってアナログ放送とデジタル放送の違いを視聴者にわかるようにアピールし、いわゆる「見るテレビ」から「使うテレビ」へというコンセプトの転換を広く知らしめていくことが最優先の課題である。

東経110度CS放送は、加入者数の拡大に苦しむCSデジタル放送の起死回生策として期待されているが、BSはBS、CSはCSといったかたちで利用されることなく、両者が連動したかたちのサービス方法が行われるようにすべきである。それが、ひいてはBSデジタル放送の特徴を際立たせ、BSデジタル放送の発展に好ましい影響を与えることにもつながっていくからである。 BSデジタル放送では、帯域の多くがデジタルハイビジョン放送の実現に割かれることになるため、データ放送は限られた帯域のなかで行われざるを得ず、高度なサービスの提供は難しくなっている。BSと同じ軌道位置に打ち上げられた東経110度CSでの放送サービスは、データ放送をも含む高機能の双方向サービスを行うことが予定されるため、BSデジタル放送のデータ放送サービスを補完して両者の相乗効果を発揮できるようなサービスが提供されることが望まれる。東経110度CSの免許の条件に、高機能であること、BSデジタル放送の普及に寄与することが挙げられていた。すなわち、BSデジタル放送との相互補完関係が前提となっているということである。

放送のデジタル化は世界の趨勢であり、国策としても重要な課題となっている。2003年には、関東・中部・近畿の3大広域圏の一部で、地上波放送のデジタル化も開始される。国民生活に深く浸透している地上波放送についても、アナログからデジタルへの移行が速やかに行われることが求められるため、その前哨戦ともいえる東経110度のBS、CS両衛星の成否が、放送のデジタル化という国策の行方を大きく左右する決め手となることは間違いない。
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