Business & Economic Review 2001年03月号
【INCUBATION】
21世紀は知的財産の時代(後編)-これから何が起こるのか
2001年02月25日 創発戦略センター 金子直哉
要約
21世紀は知的財産の時代になる。これからの時代を生き抜くために、知的財産を“開発”、“移転”、“事業化”する力を高めなくてはならない。国、企業それぞれの立場において、知的財産を核とした新事業創出のための新たな戦略が求められる。
知的財産による新事業創出力を高めるには3つの戦略を実行しなければならない。第一が「知財の流れを生むルールを作ること」、第二が「知財活用のインセンティブを高めること」、第三が「シーズ、ニーズ、インフラを集めること」、である。
日本の現状を見ると、第一の「知財の流れを生むルール作り」は着実に進められている。問題は第二の戦略となる「知財のインセンティブを高める」ことにある。そのうえで、第三の戦略となる「シーズ、ニーズ、インフラを集める」ための方策を推進していくことが求められる。
本稿では前編に引き続き、上記戦略を実行するための方策として、「公的支援方式(商品開発・市場未定型)」、「ミドルマン方式(商品開発・市場導入型)」、「異業種連携方式(商品開発・市場創出型)」の“3つの方式”を取り上げた。そのうえで、産学官の連携をもとに「知財活用のインセンティブを高める」ための“24の仕組み”を具体的に提示した。
公的支援方式は「潜在市場を対象に中長期で知財を事業化する方策」として有効であり、そのための仕組みとして、(1)共同研究型、(2)産学連携型、(3)ベンチャー支援型、(4)流通市場創出型、が注目される。
また、ミドルマン方式は「既存市場において短期で知財を事業化する方策」として有効であり、そのための仕組みとして、(1)情報仲介型、(2)支援サービス型、(3)自己リスク型、(4)ネット売買型、(5)ネットオークション型、(6)インキュベーション型、(7)アウトソーシング型、(8)シーズ評価型、(9)ニーズ抽出型、(10)エキスパート型、が注目される。
さらに、異業種連携方式は「新規市場において短中期で知財を事業化する方策」として有効であり、そのための仕組みとして、(1)基本特許型、(2)ノウハウ型、(3)ビジネスモデル型、(4)パッケージ商品型、(5)マーケットイン型、(6)プロシューマ型、(7)デファクトスタンダード型、(8)商品統合型、(9)ビジネスモデル統合型、(10)ネットビジネス型、が注目される。
これらの仕組みを縦横に活用しながら、「大学や研究機関に知財を集積すること」、「起業化と投資家を結ぶネットワークを構築すること」、「ビジネスインフラのパッケージを提供すること」が、日本における新事業創出を加速するための骨格となる。
そしてこの骨格を強化するために、産学官の新たな連携が強く求められる。