Sohatsu Eyes
2003年知的財産ビジネスの展望(1/2)
2003年01月28日 金子 直哉
知的財産クラスターマネジャーの金子直哉です。私たち知的財産事業分野では、3年前から地域インキュベーションの研究に重点的に取り組んでいます。知的財産(新技術や先端ノウハウ)を核に、地域を活性化していくにはどうすればいいのか。 「何よりも成功事例に学ぶことが一番だ!」と考え、まず海外、特にアメリカを徹底的に調べました。
国内も北から南まで実際に現地を訪問し、様々な議論を重ねております。こうした活動の中から、たくさんのインキュベーションの知 恵が見つかりました。知的財産を活用するための仕組みや工夫です。これからは、こうした仕組みや工夫を生かし、実際に地域の役に立っていきたいと考えています。
日本は今、先端技術ではアメリカとの差が開く一方、モノ作りでは東アジアの国々に追い越される、と言われています。製造拠点が海外に移転し、国内生産量が低下し、地場産業の景気が悪化する、こうした懸念も高まってきました。だからこそ、発想転換が必要です。
「国が悪くなるから、地域も悪くなる」というシナリオから、「地域が良くなれば、国も良くなる」というシナリオに、発想を転換していく必要があります。 これからは地域が、日本の競争力の源泉になります。そして地域の競争力を高めるために、知的財産による革新(イノベーション)が必要になってきます。
そのための鍵を握っているのが、地域の産学連携です。70年代後半の国内産業空洞化の危機を乗り越え、復興を遂げたアメリカでも、産学連携が重要な役割を果たしました。
88年から98年の過去10年間のアメリカの変化を見ると、大学の発明は814件から3151件(約4倍)に、研究所と企業の共同研究は98件から3201件(約30倍)に、増加しています。日本各地に眠っている大学や研究所の知的財産を発掘する。
発掘した知的財産を、地域の企業と連携して新たな事業に結びつけていく。こうしたインキュベーションの流れを拡大するために、地域の産学連携における触媒の役割を果たすことが、知的財産事業分野の第一の目標です。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。