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Sohatsu Eyes

2003年知的財産ビジネスの展望(2/2)

2003年02月12日 金子 直哉


知的財産ビジネスクラスターマネジャーの金子直哉です。 前号では、これからは地域が日本の競争力の源泉になること、地域の競争力を高めるには知的財産による革新(イノベーション) が必要になること、そのための鍵を握っているのが地域の産学連携であること、を紹介しました。

今回は具体論として、「大学の発明を生かす」ための仕組みに触れてみたいと思います。

地域に革新をもたらすには、何より、地域から画期的な発明(知的財産)が生まれてくる環境を整える必要があります。そのために最も注目されるのが、大学の果たす役割です。前号でも紹介しましたが、90年代に産業競争力の復興を遂げたアメリカでは、88年から98年の過去10年間で、大学の発明発表件数が814件から3,151件へと約4倍に増加しています。

そして、この「大学のキャンパスで生まれた発明の中から、産業界に応用できるビジネスの種を発掘し、内容を発表し、企業に移転する」役割を、アメリカではTLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)が担っています。

この結果、全米の大学では1年間に11,000件の発明が発表され、9,000件の特許が出願され、3,000件の特許が成立しています。

この中から、4,000件のライセンス契約が結ばれ、400社のベンチャーが生まれています。これらの結果として、11億ドルのライセンス収入が大学にもたらされているのです。

しかし、実際に米国大学のTLOを訪れてみると、決してうまくいっている所ばかりではありません。技術移転収入で財政的ブレークイーブン(収入が活動経費と同等がそれ以上の状態)を達成しているTLOは全体の4割程度であり、そのために7年~15年の期間を要していると言われます。

注目すべきことは、成功しているTLOには共通した特徴が見られることです。それは、企業の製造現場や営業現場などで経験を積んだコミュニケーション能力の高いスタッフが参画していること。
これが、「大学の発明を生かす」ための重要なポイントになります。 日本でもすでに27のTLOが設立され、様々な活動を展開しています。こうしたTLOの活動に対し、産業界での豊富な経験を積んだ人材の参画を促進すること。知的財産クラスターでは、そのために必要となる具体的仕組みを提言し、提言した仕組みを実際に動かすための検討を進めています。
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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