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Sohatsu Eyes

ベンチャーと金融

2003年02月25日 金原 健一


知的財産クラスターの金原です。
知的財産を活用して世の中を元気にする、こういうテーマで活動していると必ず出てくるのが資金の話です。

「アイデアはあるのだが、 事業化するまでに資本金が底をついて終わってしまった。」「銀行に頼みに行くとすぐに担保と言われるが、ベンチャー企業には担保などない。」「個人保証を取られて事業化に失敗したので借金だけが 残った。これでは再起できない。」 銀行や公的機関の融資は、その反対側は預金者から預かった預金であったり、貯金であったり、税金であったりします。これらのお金はそもそも事業化といった高いリスクは取れませんから、どうしても担保や個人保証でリスクを少なくすることが必要です。担保なしではせいぜい、 政府補助金の精算までの繋ぎ資金の融資ができる程度です。

知的財産の事業化に銀行の「融資」を期待することは現状では難しいと言わざるを得ません。 確かに今の日本では、事業化といったハイリスクへの投資は少ないと思います。

日本人は投資に嫌悪感を持っているからだ、とよく言われますが、そうは思いません。怪しげな投資詐欺事件では何百億円もの被害が出るものがあります。新規公開株式の売り出しの抽選にはなかなか当りません。「投資をしたい」「リスクを取りたい」という気持ちは日本人にもあるはずです。現に、株式投資主体がほとんどが個人で占められていた時代もあったのです。

問題は、今の日本には、投資をしたい人と投資を受けたい人を繋ぐ仕組みがないということなのです。

1/30の産業構造審議会知的財産政策部会の経営・市場環境小委員会で「知的財産の信託に関する緊急提言(案)」が提出されました。 知的財産権関連の信託を行うための法整備等を早急に進めよとの提言です。

この提言が実行されると、いろいろな効果が期待できますが、 中小ベンチャー企業の知的財産による資金調達や知的財産権のライセ ンスなども容易になりそうです。知的財産が文字通り「財産」として認識されて活用できるようになるのです。 信託という制度面の整備を進めると同時に、知的財産を評価するための目利き人材も必要です。

例えば、企業で充分な研究開発の経験を積んだ シニア人材の活用が考えられます。また、IT技術の発達によって、個人の様々な投資ニーズをインターネットで集積することも可能でしょう。 知的財産に投資したいというニーズと、資金調達したいというニーズを繋ぐ仕組みを作るには、考えなければならない多くの仕事が残っています。
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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