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Sohatsu Eyes

バイオ最前線

2003年03月11日 西村実


上席主任研究員の西村実です。
バイオの世紀と言われています。バイオといっても、アルコールや抗生物質などの発酵生産に代表される"オールド・バイオ"では ありません。

遺伝子DNAを取り扱う"モレキュラー・バイオロジー(分子生物学)" を基礎とするバイオテクノロジーのことです。ヒトゲノム情報をもとに 病気や個人差の原因が解明され、ゲノム創薬やテーラーメード医療、再生医療が実現するなど話題には事欠きませんが、ここでは視点を変え、"モレキュラー・バイオロジー"を支える要素技術のインパクト について述べたいと思います。

"オールド・バイオ"で扱う最小単位は、生きた動植物細胞や微生物です。なぜなら1個の細胞あるいは微生物を増殖させ、細胞あるいは微生物内の生体成分を取り扱いが可能なレベルにまで増やすことが 不可欠だったからです。

言い換えると培養できない細胞や微生物の遺伝子やそれが生産する有用物質を取り扱うことはできませんでした。 "モレキュラー・バイオロジー"で扱う最小単位はDNAです。もはや生命体ではありません。それを可能にしたのは、 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)という画期的な手法です。これはDNAだけを試験管内で酵素反応により増幅する技術です。 細胞や微生物を増殖させる必要はありません。

試料から微量のDNA が抽出できれば、それを増幅し、その配列を解読したり、大腸菌に組み込んでDNAに書き込まれた暗号をたんぱく質にして取り出したりすることができます。

映画「ジュラシック・パーク」では、琥珀に閉じ込められた蚊の血液から恐竜のDNAを抽出するシーンがあります。
決して不可能ではありません。

私の専門の環境分野では、土壌からDNAを直接抽出して、PCRで増幅し、有害化学物質を分解する酵素遺伝子を探し出す研究が始ま っています。土壌微生物のうち、培養できるのはごく一部です。 環境中には、"オールド・バイオ"では見つけ出すことのできない未知の有用遺伝子が無数に眠っています。

"モレキュラー・バイオロジー" により、これらの遺伝子の発見とその産業利用が急速に進むと思われます。 バイオが医療だけでなく、幅広い分野に応用される一例です。
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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