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Business & Economic Review 2003年06月号

【STUDIES】
飛躍的成長を続ける中国の携帯電話市場

2003年05月25日 調査部 IT政策研究センター 主任研究員 大木登志枝


要約

  1. 欧米では伸び悩んでいる携帯電話市場において、中国は、規模の巨大さのみならず高成長を続ける市場として注目を集めている。1990年代半ば以降、加入者数が急激に増加し、2001年6月にはアメリカを抜き加入者規模では世界最大の市場となり、2002年11月には2億人を超えた。中国市場が急速に拡大した要因は、広大な国土に13億人という世界最大の人口を擁し、長期間にわたり高い経済成長が続いたことに加えて、政府による推進策、欧米メーカーの進出、国内企業の台頭が挙げられよう。とくに、通信事業者を直接育成するなど、携帯電話市場の形成期から今日まで政府の役割が大きかった。

  2. 中国市場は、モバイル・データ通信でも、利用者数は世界各国のなかで上位に位置する。その内訳をみると、ショート・メッセージ・サービス(SMS)が大宗を占める。世界のモバイル・データ通信サービスは、モバイル・インターネットが発達した日本型と、SMS が中心の欧州型に大別され、中国は後者に含まれることになる。
    モバイル・データ通信サービスの成長には、サービスの多様化、安価な料金設定、インフラ整備のほか、多様なコンテンツの継続的提供が必須条件である。中国移動ははこれを可能にするため、i モードのビジネスモデルをベースに「移動夢網」(モンターネット)を構築した。

  3. 2002年に入り、新しい通信方式である2.5世代の導入やSMS の拡張版であるマルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)の商用化が開始された。新技術導入によって市場が拡大する可能性が生まれ、携帯電話の市場環境は日本に近づきつつある。

  4. 今後、中国では第3世代の世界標準である3方式がすべて導入されることが確実視されている。中国政府は、3方式導入という実績によって、将来的に世界の携帯電話分野で日米欧と並ぶリーダーになろうとする戦略を持つものの、中国独自方式は、通信事業者サイドが商用化に消極的であるなか、政府の戦略通りに進むか否かは予断を許さない。

  5. 中国市場は、近い将来、モバイル・データ通信の利用者数で世界最大になると見込まれている。加えて、WTO加盟に伴う市場開放のプラス効果への期待も広がっている。こうした環境下、従来、中国進出に積極的ではなかった日本企業のなかから中国進出の動きがみられるようになってきた。
    日本企業は、携帯電話分野において、a.通信事業者、コンテンツ・プロバイダ、端末メーカーと異なる分野の企業が提携してモバイル・データ通信サービスを提供する協調体制が構築されていることと、b.携帯電話の技術やコンテンツ面でD位性をもつという点で、国際競争力を有する。
    協調体制についてみると、日本市場では、iモードおよびEZwebなどにみられるように、通信事業者やコンテンツ・プロバイダおよび機器メーカーなど様々な分野の企業が参加して協調体制が発揮されたことで、利用者本位のサービスを提供する環境が構築され、モバイル・データ通信の成功の礎が築かれた。

  6. 日本企業が中国市場に橋頭堡を築くためには、日本企業の強みをどこまで発揮出来るかが、一つの重要な鍵を握る。こうした視点から日本企業の強みを生かす具体的方策をみると、合弁企業設立や業務提携にとどまらず、中国独特の規則やビジネス慣習、市場の特徴を熟知した中国企業や中国人を活用していくことが必要である。加えて、中国市場の特殊性をみれば、政府との協調関係の構築いかんが重要な問題となろう。
    なお、機器メーカーについてみると、マーケティングや販売といった川下のシステムが万全でないことやブランド・イメージが確立していないため、中国市場での総花的な事業展開は必ずしも容易ではない。それだけに、市場および生産過程のセグメント化戦略は日本企業にとって有効な戦略の一つとなろう。
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