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環境ビジネス分野 -(株)アイエスブイ・ジャパン-
2003年05月13日 染宮 一政
創発戦略センターでは、これまで2つのベンチャー企業を立ち上げてきました。1つは、アイエスブイ・ジャパン(以下、ISV-J)という環境浄化を行う会社、もうひとつはファーストエスコという省エネルギー・サービスを提供する会社です。そして、今夏、3番目のベンチャービジネスとして、ESPコンソーシアムより、エネルギー・マネージメント・サービスを提供する会社が立ち上がる予定です。
今回は、インキュベーション第1号のISV-Jについて、その概要と最近のトピックを紹介します。
ISV-Jは、米国から浄化技術を導入するために当社主宰により5年間のコンソーシアム活動を行い、その後、1995年に立ち上げた環境浄化、特に汚染土壌の浄化を行う会社です。ISV-Jの浄化技術は、米国エネルギー省によって開発されたジオメルト法という技術で、汚染物質を含んだ土壌もしくは汚染物質を混入させた土壌に電極棒を挿入、通電することで、その抵抗熱によって土壌を溶融処理します。溶融の際には、1600~2000℃という高温になるため、有機性の汚染物質は分解、無害化され、また、重金属類は土壌が溶融された後にできるガラス状の固化体の中に完全に封じ込められます。
ISV-Jを立ち上げた当初は、今ほど環境事業がビジネスになる時代ではなかったため、事業を軌道に乗せることは容易ではありませんでした。
しかし、1999年にダイオキシン類対策特別措置法、2001年にPCB廃棄物特別措置法、そして、今年2月には土壌汚染対策法が施行されるなど、環境問題や土壌汚染・有害汚染物問題に対する社会的要請、意識の高まりから、状況は変化しました。
各自治体では、ダイオキシン類規制に対応できない炉を廃炉、解体が必要な状況となっており、解体の際に発生するダイオキシン類の処理が問題となっています。また、PCBの保管者及び行政は、PCBの適正処理への対応が求められています。
ISV-Jでは、2001年度からは和歌山県橋本市にある産業廃棄物の不適正処理による汚染サイトにおいて、高濃度ダイオキシン類汚染物(200ng-TEQ/g、平均)、汚染土壌(3ng-TEQ/g以上)の処理にあたっています。これらの処理は、高濃度ダイオキシン類の本格的な無害化処理では国内初の事例となっています。
ISV-Jは、現在も会社としては十分な事業体制とはなっていませんが、今後も、ジオメルト技術が優位性を発揮することができる高濃度ダイオキシン類汚染、PCB処理などの分野を対象に、積極的に事業を展開していきます。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。