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企業の社会的責任-欧州の動向

2003年08月12日 浦出 陽子


欧州企業の、企業の社会的責任(CSR)への取組みは、リスク・マネジ メントの一環である-一週間の欧州出張でこのような印象を強く持ちました。
ここで言うリスクとは、具体的には、拠点を置く国あるいは地域における事業 の破綻、顧客・消費者の信用の失墜、NGO/NPOとの関係悪化、です。 グローバリゼーションが欧州社会に与える影響をネガティブに捉える市民の 心情と、台頭してきたNGO/NPOの環境・社会に対する問題意識が重なり 合い、欧州グローバル企業の事業活動に対する見方が厳しくなっています。

ブレント・スパーの廃棄処理方法を巡るシェル社とグリーンピースの対立(※) は1995年から始まりましたが、8年経った今でも同社のNGO/NPOとの関係は 良好であるとは決して言えません。この事件が欧州企業のトラウマとなっています。

NGO/NPOも穏健派と急進派に分かれ、以前のような求心力はなくなっ ているものの、消費者と連携した場合の事業活動に与える影響は侮れません。 消費者やNGO/NPO等ステークホルダーからの要請であるCSRを果たすことは、 欧州のグローバル企業にとって事業を行うためのライセンスのように認識 されています。 このような背景から、欧州委員会やNGO/NPOは、企業のCSRへの取組みを 一部義務化する方針で動きを作っています。

しかし欧州企業は、この動きに は懐疑的です。ステークホルダーからの要請の内容は企業の事業内容や 規模によって異なるため、ステークホルダーとの対話を重視し、どう対応するか は自主的に判断すべきである、という意見が大勢のようです。 リスク・マネジメントとしてのCSRの推進は、特にグローバル企業にとって重要 な経営課題として捉えられている。企業経営層は、企業間競争だけでなく 「NGO/NPOとのやり取り」に鍛えられている、と言えそうです。

※シェル社等が北海に所有するブレント油田の円筒状の石油貯蔵施設(浮標) (「ブレント・スパー」)を陸上に引き上げて処分するか海底に沈めるか、 2つの廃棄方法を巡ってシェルUK社とグリーンピースが対立。廃棄阻止運動 や不買運動が、英国だけでなくドイツ等にも波及。不買運動により一部地域 ではシェルの売上が4割下がるなど、社会的大問題となりました。
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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