Sohatsu Eyes
ステークホルダー・エコノミーへ
2003年09月24日 萩原 美穂
近年、「企業の社会的責任」という言葉が企業経営のキーワードとして語られるようになってきましたが、「職場の安全・健康の確保、商品の安全性、環境保全、地域社会への貢献、…これらはすべて日本企業が従来から取り組んできたことじゃないか、なぜ今になって『企業の社会的責任』という言葉で語られなければならないのか」…こんな声をしばしば耳にすることがあります。「企業の社会的責任」が現代の日本に登場した意義は、よく言われるように、「企業不祥事が多発している時期に、海外から言葉として入ってきた」だけなのでしょうか。いいえ、その背景には、実はもっと大きな社会経済の根底における変化が隠されています。
インターネットの普及によって情報が自由に駆け巡るようになると同時に、様々な立場から社会を構成する“個”(個人あるいは団体としての個)として人々が価値観を表明する世の中へと日本社会は大きく変容しつつあります。こうした社会の変化は、個と個が自らの主張を伝え合い、応え合うことを要請しています。この「伝え合い、応え合う」関係性(リレーション)の構築こそが、現代の日本社会における「企業の社会的責任」の意義であり、こうした相互作用の中で両者が進化していく社会、それこそがステークホルダー・エコノミーだと考えます。
来たるべき時代は、多様な価値観を持った個が相互に影響を与え合い、相乗効果として、これまでになかったレベルの進化発展を遂げる社会です。我々のチームは、成熟したステークホルダー・エコノミーへと社会の発展の歯車を速めるためのプレイヤーの一員として、企業、投資家、消費者、NGO等と協働しながら、今後もさまざまな切り口から活動を展開していきます。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。