Sohatsu Eyes
系統電源と分散電源
2003年09月24日 染宮一政
今夏8/14、北米東部において、歴史的ともいえる大停電が発生しました。
原因は色々言われていますが、電力自由化による送電設備投資の減少、送電管理体制の不備が大きな原因の1つのようです。 また、わが国でも、今夏は、東京電力の多くの原子力発電所が停止し、管内で供給力が不足による停電が発生する可能性もありました。記録的な冷夏という天候要因が幸いし、結果的には停電という事態は避けることができました。
原因は異なりますが、期せずして日米で今夏、同時期に電力のエネルギーセキュリティの脆さを露呈する事態が発生しました。これらから第1に学ぶべきは、電力自由化の制度設計であり、原子力政策・エネルギー政策のあり方ということになるでしょう。
しかし一方で、エネルギーセキュリティを考えた場合には、仮に分散電源がより広く多く普及していたならば、今回の事態の及ぼした社会的な影響はもっと少なくて済んだのではないでしょうか。実際に、今夏の電力危機の際には、各需要家に対する節電に加えて、需要家が保有する非常用発電設備を緊急的に稼動させることも検討に上っていました。
だからといって、既存の社会インフラである電力系統を否定して全てを分散電源としていくことは現実的ではありません。分散電源と電力系統が相互の長所を生かしつつ、相互補完していくことが理想です。
現在、創発戦略センターでは、家庭用燃料電池のネットワーク利用をテーマにDESSコンソーシアムを立ち上げています。本コンソーシアムも、単に燃料電池ビジネスの検討というだけでなく、上記のような電力規制緩和、エネルギーセキュリティ確保、さらに、将来の水素エネルギー社会の可能性という時代背景を見据えた活動を目指しています。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。