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水素社会の実現:使いやすさを高める知恵が重要

2003年10月28日 市川 元幸


昨今、地球環境悪化をくいとめる担い手として、燃料電池への期待が高まっています。燃料電池は、すでに病院などで、停電などに備えた自家発電装置として使われ始めています。今後、小型化を活かして、自動車やパソコンなどに装備され、さらに各家庭に設置され、電気機器や風呂などのために電気と熱を供給することが期待されています。

燃料電池が本格的に家庭に入りこむためには、発電効率の向上を通じたコスト低下が必要とされていますが、課題はそれにとどまりません。

技術の歴史をみると、「いい技術」がただちに実生活に導入されるわけではありません。例えば、前述の自家発電装置で広く使われているディーゼルエンジンは、1892年、当時のガソリン機関を上回る効率性を期待されて特許出願が行われたものの、実際の普及は第2次大戦前後になってからでした。発明者のディーゼル氏のドイツ的な一徹さが災いし、原理を実現するための材料や関連装置の開発に数十年かかったということです。

また、日本については、移動手段としての車輪の利用は、偉い人が駕籠に乗っていたのをみる通り、幕末に至るまできわめて限定的でした。遠く平安時代に、道の凹凸を克服できるよう大きな車輪をつけた牛車が開発されていたにもかかわらずです。そこには何か生活感覚とか生活習慣からくる問題があったのでしょう。

歴史から学べることは、「いい技術」が開花するためには、関連技術の研究開発、使いやすさを高めるための工夫が必要だということです。

本年6月に発足したDESSコンソーシアムでは、燃料電池を設置した各家庭をネットワーク化し、そのなかでエネルギーの過不足をうまくやりとりするルールや機能を検討しています。

水素社会を早期に実現させるためには、ハード面の技術革新に加えて、実生活での使いやすさを高めるために知恵をしぼることが重要です。
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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