Sohatsu Eyes
目利き人材を発掘せよ
2003年11月11日 金原 健一
平成14年に知的財産基本法が制定されるなど、国レベルでも知的財産の価値が認識されるようになりました。企業の資産価値の情報開示方法にも変化の兆しが見られます。 すなわち、ブランドや知的所有権の価値を数値化しようとする知財会計の検討が始まっています。
企業が情報開示する目的の1つに資金調達があります。固定資産を担保に資金調達する従来の方法に加え、売掛金などの流動資産をもとに資金調達する動きが増えています。資金を提供する立場から見ると、事業の将来性を見極めなければリスクを判断できません。つまり「事業の目利き」が求められています。さらに知財を根拠に資金を提供する場合には、知財の価値を判断する「技術の目利き」も必要になってきます。
企業は調達した資金の一部で研究開発を行って知財を生み出し、その知財を源泉にして事業を行います。世の中の動きが早くなりニーズが多様化しているため、企業が必要な全ての研究開発を自前で行うことが困難になっています。事業に必要な知財を外部から仕入れたり、外部と連携して開発することが盛んになっています。外部の知財の「事業と技術の目利き」が企業の命運を握っているのです。
ではこういった事業と技術の目利き人材はどこにいるのか?この問いの答えを私たちは「地域」に見出そうとしています。具体的には、地域の公設試験研究所を核とした産学官連携の仕組みを検討しています。地域の知財を目利きして企業の研究開発をサポートする、あるいは企業の知財を目利きして地域での活用を探る、これらを実現することで地域と企業との相互発展を目指しています。この活動の中で、地域に埋もれている目利き人材を発掘しようとしています。この目利き人材が金融と結びつけば、知財会計も生きたものとなるでしょう。地域の、引いては日本の知財と資金の活力を有機的に結びつける、そのカギは目利き人材にあります。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。