Sohatsu Eyes
中国 省エネ取り組み事情
2003年11月25日 王 婷
先日、ニューヨーク・タイムズ(電子版)を読んでいましたら、「中国が燃料の経済性高める立法へ」(China Set to Act on Fuel Economy)という記事が目にとまりました。
この記事によると、新興自動車生産国である中国では、自動車の燃料消費効率を先進国並に高めて石油消費を削減するため、自動車の省エネ促進法を作ることになったという。法律が施行されると、トヨタやフォルクスワーゲンを初めとするすべての自動車メーカーに対して、2005年までに燃料効率性目標値の達成義務が課せられます。この法律の制定により、最新のハイブリッドエンジンなどの技術の導入も促進されるとありました。
これは中国政府が石油セキュリティに本格的に取り組もうという姿勢の表れといえるでしょう。中国のエネルギー消費構造は、石炭の消費が依然55%前後と高い割合を占めているものの、石油の消費も年々増大し、全体の20%~30%を占めています。2000年の年間消費総量は2.1億トンとなり、アメリカ(8.9億トン)、日本(2.5億トン)に次ぎ、世界第3番目の石油消費大国となっています。そのうち3分の1が中東などの国からの輸入です。政府のある予測によると、2020年には中国で消費される石油の約55%~60%が輸入に依存することになるそうです。この数値は現在のアメリカの石油輸入量に匹敵します。
2001年の中国全体の自動車保有台数は1802万台でした。1990年と比べると227%の増加で、この間の年平均増加率は11.4%です。この結果、自動車の燃料消費は石油消費総量の22%~36%を占めるようになりました。中国当局が自動車の燃料消費効率を上げ、自動車省エネへの取組みを急ぐのは当然といえば当然です。
しかし、今回の法律では自動車の省エネがテーマとなり、環境性をどう考えるかについては話題となっていません。中国では、エネルギー起因のCO2排出量は1980年の4.06億T-Cから1999年の8.34億T-Cの2.05倍増となりました。都市部の自動車排気ガス汚染が顕在化しつつあります。自動車の省エネ、そして環境性を両立させる政策が大きなテーマとして注目されなければなりません。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。