Sohatsu Eyes
見えないものを見る力
2004年01月14日 瀬戸 和佳子
今週の金曜日、いよいよMATICS(Material Tracing IC System)コンソーシアムの設立総会が行われます。
ここしばらく、本コンソーシアムの立ち上げに注力して参りましたが、この間、MATICSという新たな事業の萌芽が徐々に形を成していくさまを目の当たりにしてきました。まだ形のない未来の事業のアイディアが、多くの人の関心を呼び、多様な意見がぶつけられる中で、具体化してくる―その躍動感には胸躍るものがあります。
MATICSは、前述のようにMaterial Tracing、つまりモノが生産されてから廃棄されるまでの、ライフサイクル全てにわたってトレースを可能にし、資源管理を行うものです。
いわゆる動脈分野では早くからICタグ(RFID)の活用が検討され、実用化もされていますが、静脈分野へのIC技術の適用はこれまで積極的に行われてはきませんでした。しかし、モノの生産管理をするならば廃棄管理をすることも可能なはずです。
そこには、環境問題を引き起こす廃棄物の安全管理のみならず、資源の最適な利用と高度なリサイクルシステムという、潜在的な社会のニーズがあると考えられます。静脈分野における市場の創出は、RFIDという新たな技術の開花によって立ち上がりつつある新市場に、さらなる可能性があることを示しています。
創発戦略センターではこれまで30程のコンソーシアム活動の中から3つの事業を立ち上げ、ビジネスとしての成功を収めてきました。MATICSコンソーシアムの構想から立ち上げまでつぶさに見てきた中で感じたことは、社会で「新しいもの」を生み出すには、「見えないものを見る力」が必要だということです。目の前の現実に縛られることなく、自由な発想と「あるべき姿」を求める思いは、未来の世界を構築する礎となり、変化への求心力となっていきます。
今後のMATICSの展開に、ご期待ください。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。