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Business & Economic Review 2002年01月号

【FORECAST】
2002年度わが国経済の展望-構造改革路線の継続に向けて

2001年12月25日 調査部 経済研究センター


要約

わが国経済は2000 年末ごろに後退局面に転じ、企業部門を中心に後退色が一段と強まるなかで、 9月に発生したアメリカ同時多発テロにより、先行き一段の景気悪化が懸念される状況。


こうした状況下、今後を展望するうえでポイントとなるのは、a.同時多発テロの発生で世界が どう変わり、そのもとで、IT バブル崩壊の影響も踏まえアメリカ景気がどういうコースをたど るのか、b.中国台頭のわが国産業に対するインパクトをどう考えるか、c.景気後退局面のもとで 小泉構造改革はどういったかたちで進むのか、の3点。

(1)同時多発テロの発生により不確実性が急速に台頭するなか、a.経済主体の行動が慎重化しグローバルな資金の流れが萎縮、b.各種セキュリティー強化など安全コストが上昇、などが世界経済のマイナス要因として作用。もっとも、中国のWTO 加盟などを踏まえれば、グローバリズムの潮流自体は今後も続く見通し。
アメリカ経済は当面厳しい状況が続くものの、2002 年春ごろには、a.テロの影響減退、b.利下げや減税・歳出増などの政策効果の浸透、c.インフレ率の低下、などにより、景気悪化に歯止めがかかる見通し。もっとも、各種調整圧力が残るため当面は低成長を余儀なくされるほか、調整圧力一巡後も90年代後半の高成長を期待するのは難しく、アメリカ主導型世界景気拡大の時代は終焉。

(2)中国の急速な技術水準の向上がみられるなか、大幅な賃金格差の存在が日本製品のコスト競争力低下要因となり、近年の輸入浸透度上昇の主因に。中国製品の急速な流入は、労働集約的な国内製造基盤を縮小させると同時に、デフレを進行させる大きな要因に。もっとも、新興工業国の追い上げを受けるのはある意味で先進国の宿命。むしろ、わが国製造基盤の縮小の真因は、高コスト体質や産業・雇用システムの硬直性を温存し、新産業育成・IT革命への対応に遅れてきたことに求めるべき。
こうした事態は憂慮すべきことながら、生き残りをかけて日本企業は抜本的な経営改革に取り組むなか、収益体質の改善は徐々に進展。もっとも、収益体質改善に向けた調整過程は依然道半ばであり、当面は景気を悪化させる要因に。成長力のある企業は海外展開を積極化しており、このままでは国内産業の空洞化には歯止めがかからず、縮小均衡型の体質改善にとどまる恐れも。

(3)今後の財政政策は、量的な制約のもとで、公共投資の配分見直しや特殊法人改革の推進など、歳出の質的転換を通じて生産力向上効果・需要創出効果を最大化することを目的とすべき。この意味で、小泉政権の取り組みは一定の評価ができるが、国債発行30 兆円枠にこだわりすぎると構造改革が頓挫する懸念も。
一方、不良債権問題では、大手行の不良債権(危険債権以下)が今後3 年以内にオフバランス化される予定。もっとも、不良債権問題の主因は、景気低迷長期化に伴う不良債権の新規発生であり、新規発生を止めるためには、抜本的な構造改革推進により日本経済を再生させることが必要。


以上を踏まえると、2002年度も基本的に景気後退局面が持続する見通し。とりわけ、2002年前 半は、世界同時不況に伴う輸出・鉱工業生産の減少、家計・企業マインドの悪化などから、景気 は一段と厳しさを増す公算。2002年後半には、アメリカ経済が緩やかな回復に転じ、株価も持ち 直しが期待できることから、景気悪化に歯止めがかかるとみられるものの、従来のような輸出主 導型回復は難しいうえ、構造改革に伴うマイナス影響も残ることから、回復力は脆弱なものにと どまらざるを得ない。
2003 年度以降を展望しても、中国台頭下での国内産業調整、構造改革路線の継続、アメリカ主 導型世界景気拡大の終焉により、1~2年は平均ゼロ成長を覚悟する必要。もっとも、公共投資 減少など意図せざる構造調整はここ数年すでに進行しており、改革のデフレ圧力を過大評価すべ きではない。また、ここ数年の企業の収益体質強化は、構造改革に伴うデフレ圧力に対する抵抗 力の強化を意味する。


90年代以降の経済低迷の根因は高コスト体質・既存システムの硬直化にあり、近年における中 国台頭により、わが国経済の相対的なコスト競争力の低下が一段と鮮明に。この点からすれば、現下のデフレの進行、名目マイナス成長―名目縮小の持続は、国際的にみて高すぎる国内物価体 系の是正過程であり、いわば避けられない調整として甘受せざるを得ない。名目成長率はマイナスでも実質成長率はプラスとなることは可能であり、むしろ当面はそうした状況に経済を誘導し、速やかな構造改革の進展と実質生活水準の維持・向上を持続させることが経済政策の課題。


90年代以降の経済低迷の根因は高コスト体質・既存システムの硬直化にあり、近年における中 国台頭により、わが国経済の相対的なコスト競争力の低下が一段と鮮明に。この点からすれば、現下のデフレの進行、名目マイナス成長―名目縮小の持続は、国際的にみて高すぎる国内物価体 系の是正過程であり、いわば避けられない調整として甘受せざるを得ない。名目成長率はマイナスでも実質成長率はプラスとなることは可能であり、むしろ当面はそうした状況に経済を誘導し、速やかな構造改革の進展と実質生活水準の維持・向上を持続させることが経済政策の課題。
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