Sohatsu Eyes
リサイクルの歯車
2004年01月27日 三室 かな江
私は現在、発泡スチロールリサイクルについての調査研究に携わっています。発泡スチロールリサイクルのプレーヤーには、「製造事業者」「排出事業者」、「再生事業者」、「自治体」、「指定法人(自治体回収分のリサイクルを担う)」、そして「一般消費者」がいます。はじめ、公開情報や文献から各プレーヤーの実態を調査していましたが今ひとつはっきりと全体が見えてこないというのが実感でした。
そこで、色々な団体や事業者の方に直接お話を伺いに行き、リサイクル取り組みの状況や仕組み、リサイクル意識について様々な角度から実態調査を行いました。
その結果、多くの排出事業者が、従来の単純焼却・埋立ではなくリサイクルに向けて動いていること、再生技術では多くの優れた技術が開発されていること、スーパーの食品トレイ回収や分別排出といった一般消費者の環境意識の高さなどが見えてきました。
一方で、法律と指定法人を取り巻く複雑な仕組み、自治体の分別回収負担の大きさ、リサイクル義務を履行しないフリーライダーの発見・罰則の仕組みの欠如、などの問題点も明らかとなってきました。中でも最もリサイクルの妨げとなっているのは、製造事業者、排出事業者、再生事業者、自治体のプレーヤー間の連携体制がないことです。非常に良い技術があり、リサイクルに対する高い意識もありながら、それぞれが上手く噛み合っていない状況なのです。
リサイクルの仕組みを巨大な発泡スチロール再生機器と考えると、各プレーヤーはその機械の歯車となります。現在、ようやくそれぞれの歯車の位置が決まり、その歯が刻まれてきたところです。リサイクルが上手く継続するためには、全体を見ながらその歯車を組み立て、動かしていく人・枠組みが重要であり、全員が連携し、共に進んでゆけるようにすることが必要です。微力ながらそのコンダクター的役割をお手伝いして行けたらと思っております。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。