Sohatsu Eyes
非常事態に問われる真価
2004年02月10日 白鳥 わか子
SRI(Social Responsible Investment)が投資対象とするのは、「社会的に信頼できる企業」です。企業収益の成長性や財務の健全性など通常の投資の際に考慮される項目に加えて、企業の社会性を重視した投資を行うものです。ここでいう社会性とは、法令順守、情報公開、雇用者の人権、地域への貢献、環境への配慮などです。
ではその「社会的に信頼できる企業」が企業不祥事を起した場合、SRIの企業評価に係るものとしてその不祥事をどう捉えるのでしょうか。我々の考えるSRIでは「企業不祥事=ファンドからの除外」を意味するものではありません。ただし、企業不祥事が我々の行った企業調査の結果を否定するものか否か、今後もより深刻な不祥事を起こす可能性を示唆するものではないかを慎重に判断します。
またこの際、「企業がどのようにその不祥事に対処したか」という点にも注目しています。具体的には、事件発生後の情報公開は適切になされたか、被害の拡散を食い止める手立ては打たれたか、原因の究明はきちんとなされたか、再発防止策はとられているか、などです。
不祥事への対処法に注目する理由は二つあります。一つはもちろん、きちんとした不祥事への対処がなされた企業ほど、再発の可能性が低いと考えるからです。そしてもう一つは、そうした非常事態への対処方法から、普段の公開情報からは見えない企業の姿が見えてくるためです。
環境報告書やCSR報告書といった公開情報から、SRI投資対象銘柄を選定するアンケートへの回答、そして企業へのインタビューなど今日我々は様々なツールで企業に関する情報を収集することができます。しかしながら、そうした情報から取得できるデータには限界があります。不祥事は、企業にとっての非常事態です。その非常事態への対処方法から情報収集では得られない、企業の考え方や方針、姿勢などを垣間見ることができるのです。
『非常事態時こそ、その真価が問われるとき』-使い古された言葉ですが、まさにその通りです。無論、不祥事など起こさないにこしたことはありません。ただ、その企業が持つ底力を見るツールとして、非常事態への対処方法の観察は大きな力を発揮します。
-そしてそれは勿論、企業のみならす、人についてもあてはまる言葉なのではないでしょうか。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。