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Sohatsu Eyes

税金と地域通貨

2004年03月09日 嵯峨 生馬


日本円などの法定通貨と違って、特定の地域やコミュニティで流通する地域通貨。
今日は、地域通貨と税金との関係についてお話をしましょう。
といっても、「地域通貨に課税するか?」という議論ではありません。そうではなく、工夫次第で「税金と地域通貨とは互いにいい関係を築けるのでは?」という前向きなお話です。

なぜ税金があるか。教科書どおりの答え方をすれば、それは公共の福祉のためです。公共の福祉のために、医療や福祉、教育など予算を必要とする部門に配分する、そのための原資を確保するのが税金の役割です。
これに対して、地域通貨は、税金とは別のやり方で公共の福祉を実現しようとする仕組みといえます。例えば、街のごみ拾いや海岸の清掃、森林の整備、建造物の修復のための寄付。そうした活動に参画した人に対して、地域通貨は支払われるのです。

税金は、持てる人から引く、いわゆる引き算の発想に拠って立ちます。これに対して、地域通貨は参加や行動に対して付与する、すなわち「足し算」の発想です。
近頃、行政とNPOの協働が頻繁に提唱されますが、ここに税金と地域通貨を組み合わせることも考えられるのではないでしょうか。

例えば、ごみを減量させたい行政と、循環型社会の実現を目指すNPOがあるとしましょう。行政はごみの有料化によって、ごみを出すという行為にマイナスのインセンティブを課すことができます。同時に、NPOは、家庭の生ごみを回収して堆肥にして農家に供給するなどの一連の流れの中で、資源回収に協力した住民に地域通貨というプラスのインセンティブを付与することが考えられます。両者はひとつの目的に向かって、引き算と足し算という二つの手法を組み合わせながら協働しているのです。
行政の持ち味である、公平性、全体性と、NPOの持ち味である付加価値志向、未来志向とを組み合わせる。地域通貨が、そんな地域づくりのヒントになればと思います。

【写真】NHK生活人新書『地域通貨』
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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