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Sohatsu Eyes

エイジングと向き合う

2004年03月23日 柴田 協子


高齢化という現実に立ち向かうのは容易ではありません。「年は取りたくない」と思う人がほとんどでしょう。年金制度や雇用体系が大きく変化している現在は、特に不安感が増します。 高齢化に関わる現象を理解し、様々な課題を解決するために生まれた学問があります。ジェロントロジー(Gerontology)です。一言でいえばstudy of aging、高齢化の研究で、日本では一般的に「老年学」と訳されています。社会科学のあらゆる関連分野の見識を統合し、人は年を取るとどうなるのか、社会が高齢化することによる課題をどう解決していくのか、考えていくのです。

具体的には、生理学、心理学、社会学、政策学を核として、行政学やビジネス、コミュニケーションなどもその周辺領域として関わります。 ジェロントロジーの根底にあるのは、高齢者や高齢社会に対する偏見を取り除き、肯定的な考え方をしようという思想だと思っています。ジェロントロジーを学んだ私もまた、真実を知る、あるいは理解することで年を取ることや、この高齢社会に対する先入観を変えたり、不安を減らしたりすることはできると信じています。

私がジェロントロジーから学んだことのひとつは「高齢者は多様である」ということでした。高齢者とひとことでいっても、その年齢の開きも、身体的な状況も、教育や経済的な地位も、実に大きく異なります。さらにいえば、育った時代背景や文化が違えば、それもまた高齢になると大きな違いとなって個人の価値観に影響してきます。じつはあたりまえのこうしたことも、高齢者を理解する上では忘れがちになります。

これまで、こうした知見はビジネスの実践に生かしづらいと感じてきました。しかしながら、いわゆる「学問」を「学問」だけで終わらせない努力が必要なのだと、最近改めて思うようになりました。より多くの人に伝えたいことは何か、どのような言葉で伝えればよいのか。ジェロントロジーの役割と同時に、学んだものとしての私自身の役割も果たしていきたい―。部屋のベランダから見える桜の大きく膨らんだ蕾を見ながら、新年度を前に思うのでした。

□書籍 主役はシニア―超高齢時代のビジネスを考えるならシニアの生き方を創造せよ(日本工業新聞社、共著)
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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