Sohatsu Eyes
資源リサイクルの課題
2004年03月23日 荒生元
家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(家畜排泄物法)」が平成11年11月に施行され、猶予期間が終了する今年の11月からは、家畜糞の野積や素掘投棄が禁止されます。対応策として、周辺で排出される生ごみなどとの混合堆肥化処理施設の整備が計画されていますが、バイオマス資源の利用促進が期待される一方で、処理に伴って発生する堆肥の利用先の確保が問題になっています。
これまで野積や素掘投棄されてきた家畜糞を全て堆肥化した場合でも、畜産業が盛んな一部の地域を除き、ほとんどの地域では潜在的に十分利用可能な量であると言われています。「食の安全性」への関心の高まりから有機野菜の需要拡大が期待されているなかで、堆肥の利用先の確保が問題となっている背景には、堆肥化に関するいくつかの問題があるようです。
最大の原因は、堆肥化が「廃棄物処理」に主眼を置いて行われてきたことです。短期間で簡単に処理する方法が指向されてきたことにより、良質な堆肥の生成に欠かせない生ごみの分別や、発酵期間や良好な発酵状態の確保などが十分に行われてきませんでした。そのため、耕種農家の堆肥に対する理解も深まらず、逆に悪いイメージが定着してしまっている状況です。
一方で、堆肥の流通がうまくいっている地域も少なからずあります。そのような地域では、混合する生ごみの分別が徹底され、良質の堆肥を作るための管理が行き届き、農家も堆肥の価値を認めて積極的に利用しています。
こうした状況を作り上げるためには大変な苦労があったという話しも聞きます。堆肥の生産者は勿論のこと、家畜糞や生ごみの排出者である畜産農家や地域住民、利用する立場の耕種農家も含めて、地域ぐるみで堆肥化によるバイオマス資源の利用に理解を示し参加することが最も重要であると感じます。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。