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Business & Economic Review 2004年10月号

【REPORT】
自治体職員に対する業績給導入の条件

2004年09月25日 研究事業本部 主任研究員 山中俊之


要約
  1. 自治体職員の勤勉手当や特別昇給などに業績を反映させる業績給の導入について、盛んに議論されている。a.年功的な賃金体系が職員の労働に対するインセンティブを奪っていること、b.財政難から年功のみで上昇する人件費の削減に取り組む必要があること、c.民間企業において定昇の廃止など成果主義的な賃金の運用がなされるようになったこと、などが理由として挙げられる。現在政府が検討している公務員制度改革においても業績給の導入が一つの柱となっている。
    しかし、業績給の導入に際し、どのような条件を備えれば、職員のインセンティブ向上につながるかについては、十分な研究がなされておらず、実務的にも固まった見解があるとは言い難い。したがって、その条件を明確にすることが必要である。

  2. 大都市近郊の中規模な自治体において全職員を対象に業績給についてのアンケートによる意識調査を行ったところ、「賛成」が30.6%、「管理職であれば賛成」が16.3%、「反対」が14.9%、「分からない」が33.3%、「無回答」が14.9 %となった。
    この結果をさらに、同じアンケート調査によって得られた年齢、職位、職種、専門職志向性等の業績給への意識と関係の可能性が推定される説明変数を用いて多変量解析により分析すると、a.技術職が、業績給に対して後ろ向きである、b.勤続年数が短い、すなわち年齢が低い場合に、より業績給を求める、c.部内のコミュニケーションや部下指導が十分になされている場合に、業績給に対して前向きであるなどの結果が得られた。

  3. 以上を踏まえれば、業績給の導入に際しては、a.技術職職員については、業務範囲の拡大や事務職との垣根の解消などによって職務における裁量を拡大させる、b.勤続年数の長い職員については、ライフプラン研修などを通じた職務に対する動機付けを行う、c.コミュニケーション能力が高く、部下指導ができる人材を管理職に昇任させる等の人事施策、が必要である。

  4. コミュニケーション能力が高く組織のマネジメントのできる管理職の育成と登用が、今後の公務員制度改革においても、とくに重要となる。
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