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Sohatsu Eyes

日本とアジア

2004年05月11日 萩原 美穂


「ここ、フィリピンに暑い夏がやってきました。ものすごく暑くて、みんなじっとしていられないくらいです。」 ―― 帰宅すると、2月に休暇で初めて訪れたレイテ島から、3通目になる手紙が届いていました。彼女たちは、島の南部に位置するソゴッド湾東岸にあるトーマス・オパス大学の一年生。同大学には、NGOの仲介で米国人のスポンサーから奨学金を受けて勉学を続けている学生が、彼女たちを含め、17名在籍しています。

「父は小作農でお金に恵まれない家庭に育ったので、奨学金をもらえたことは私の将来にとって救いでした。私の夢は弁護士になること。けれど今は、家から通えるこの大学で教員になるための勉強をしています。」
飛び入り参加させてもらった、スポンサー歓迎パーティーの開かれた大学のエントランスホールは、一階部分が鉄筋むき出しで未完成のまま。こぢんまりとした図書館の天井は腐って大きな穴が開いていました。けれど、彼女たちは一様に明るく、仲間たちと学ぶことの喜びをからだじゅうで表現しているかのように、次々に私の手を取って誇らしげにキャンパスを案内してくれました。

ところで、今回現地を訪れた米国人のスポンサーには、若々しいパワーのみなぎる二人の老人の男性が含まれていました。波の打ち寄せる浜辺の丸太小屋でオーダーした夕飯を待っていたとき、老人の一人はノルマンディー上陸作戦に、もう一人はレイテ島上陸作戦にパイロットとして参加したという話がふと聞こえてきました。その数日前には、セブ島からレイテ島に向かうフェリーで隣に座った35歳くらいのフィリピン人男性が、「日本人は戦時中のことを聞くのは嫌がるみたいだけど」と前置きした上で、戦争のこと、フィリピンと日本の関係のこと、フィリピンの経済発展がなぜ順調に進んでこなかったのかについて、彼の考えを語ってくれました。

過去と現在、日本とアジア、人々の生活と経済、・・・アジアの国々を歩くたび、そういったものがまるで都会の雑踏の騒音のように一度に私の中に流れ込んできて、それがからだの中で解を求めて化学反応を起こすような錯覚に陥ります。それは今は“感覚”でしかありませんが、自分なりの解を探すための“道筋”にいつか変えていきたいと思っています。
 
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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