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コラム「研究員のココロ」

行政機関におけるプロジェクトマネジメントの有効性

2004年11月22日 柿崎平


 プロジェクトマネジメントは、民間企業、とりわけエンジニアリング、建設、製薬、ICT、さらにはコンサルティングなどの業界で利用され発展してきた経営管理手法であるが、そのアプローチおよび手法は国、都道府県、市町村をはじめとした行政機関においても適用可能であり、行政機関がおかれた環境を勘案するとその導入効果極めて高いものと考えられる。
 行政機関にPM能力が求められてきている背景および主たる理由は次の通りである。

  • 逼迫化する財政状況と多様化かつ高度化する行政需要への対応という二律背反を克服していくためには従来型の行政管理手法では対応できないことが明らかになってきている。


  • 行政が行う事業等に時限性が強く求められるようになっている。目的を明確化したうえで、その達成状況等を常にモニタリングし必要に応じて軌道修正を図ることが迫られている。


  • 複雑化する社会問題に対応しようとするそれぞれの事業に多様な知識、スキル等が必要になってきている。それにより、1つの事業に同時に多数の部署が関与するケースが増えている。


  • 一方で実態は、各事業の実行および管理は、現場担当者任せになっているケースが多く、いわばタコツボ化の弊害が顕著である。それらの多岐にわたる事業をより上位の目的から適切に管理する仕組みづくりが喫緊の課題となっている。


  • PPPの動向、市場化テストなど、外部との連携ないしは外部への委託が増加する傾向にあるが、その際、行政側のマネジメント能力の欠如が大きな課題となってきている。

 以上の状況に行政機関としてまったく対応してきていないわけでもない。例えば、近年の政策評価ないしは行政評価の展開には類似の問題意識が含まれていたことは間違いない。しかしながら、国レベルの政策評価は未だ手探りの段階であり、一方、都道府県および市町村における行政評価は「いわゆる事務事業評価の過度な流行」が災いした面もあり、結果として本来的な効果を獲得するまでには至っていない状況にある。そもそも、基礎的なマネジメントスキルや枠組みが欠落している組織に、「評価」のみをアドオンしようとしたアプローチそのものが失敗の要因であり、現在、その見直しあるいは再構築が各地で進められているところである。

 そうした状況下において、行政機関の本来の役割機能を発揮していくための一つの有力な方向性は、プロジェクトマネジメント手法を組織全体に埋め込んでいくことである。いわば、「縦割りの手続き重視の管理運営から、変化する政策課題に柔軟に編成されるプロジェクト体系を軸にした経営」への転換が求められていると言える。ここでいうプロジェクトとは、行政評価で採用された事務事業とほぼ同様の概念であり、明確な目標を有する1つの活動体系である。そのプロジェクト群を束ねたものがプログラムであり、個々のプロジェクトはプログラム目標を実現するために存在していると見る。プロジェクトを展開するためには、人、モノ、金等の経営資源が必要であるが、限られた資源を如何に効果的に配分してプログラム全体の成果を獲得するのか、それを司るものが「ポートフォリオ・マネジメント」である。それは何も特殊な手法ではなく、一部の先進自治体では、施策評価あるいは行政経営システムとして採用されつつある手法と発想は同類のものだ。




 以上の状況に行政機関としてまったく対応してきていないわけでもない。例えば、近年の政策評価ないしは行政評価の展開には類似の問題意識が含まれていたことは間違いない。しかしながら、国レベルの政策評価は未だ手探りの段階であり、一方、都道府県および市町村における行政評価は「いわゆる事務事業評価の過度な流行」が災いした面もあり、結果として本来的な効果を獲得するまでには至っていない状況にある。そもそも、基礎的なマネジメントスキルや枠組みが欠落している組織に、「評価」のみをアドオンしようとしたアプローチそのものが失敗の要因であり、現在、その見直しあるいは再構築が各地で進められているところである。
 そうした状況下において、行政機関の本来の役割機能を発揮していくための一つの有力な方向性は、プロジェクトマネジメント手法を組織全体に埋め込んでいくことである。いわば、「縦割りの手続き重視の管理運営から、変化する政策課題に柔軟に編成されるプロジェクト体系を軸にした経営」への転換が求められていると言える。ここでいうプロジェクトとは、行政評価で採用された事務事業とほぼ同様の概念であり、明確な目標を有する1つの活動体系である。そのプロジェクト群を束ねたものがプログラムであり、個々のプロジェクトはプログラム目標を実現するために存在していると見る。プロジェクトを展開するためには、人、モノ、金等の経営資源が必要であるが、限られた資源を如何に効果的に配分してプログラム全体の成果を獲得するのか、それを司るものが「ポートフォリオ・マネジメント」である。それは何も特殊な手法ではなく、一部の先進自治体では、施策評価あるいは行政経営システムとして採用されつつある手法と発想は同類のものだ。

 他の経営手法と同様、プロジェクトマネジメントが万能ということでもない。1つの経営手法を活用し効果をあげるためには同時にさまざまな改革が必要になることが大半だ。行政機関がプロジェクトベースの運営に移行していくためには、正に経営全体の再構築が必要になる場面も出てくるだろう。総合計画、行政評価、予算編成、定員管理、人事評価、人材育成、責任と権限の配置、外部資源の活用など、通常は別々に議論される課題をシステムとして組み立てなおすことが行政機関共通の課題であり、その際の有力なコンセプトの一つが「プロジェクト型経営」である。
 行政機関を取り巻く状況は劇的な変化を遂げてきている。来年には、合併後の新市が数多く誕生するが、従来型の小手先の見直しに終始することなく、そろそろ行政組織のあり方そのものを根本的に改革する方向に舵を切る時であろう。

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