Business & Economic Review 2003年02月号
【REPORT】
アジア向け輸出に牽引される関西経済-2003年度関西経済の見通し
2003年01月25日 調査部 関西経済研究センター
要約
- 2002年度の関西経済は、上期にかけて輸出の回復を主因に持ち直しがみられた。しかし、企業の設備投資姿勢は慎重で、個人消費も低調に推移するなど、内需の回復が遅れ、下期には輸出の鈍化とともに足踏み感が強まった。
関西経済回復のためには、輸出の増加による牽引が引き続き重要となるが、中国経済が堅調な一方、アメリカ経済は減速傾向を強めるなど、輸出環境に不透明感が強まっている。 - 関西の輸出動向をみると、アジア向けが牽引し、2001年10~12月期を底に回復に向かった。品目別には、2002年初からの関西の輸出の回復局面において、電気機器・一般機械・化学製品の増加が目立った。これらの品目は、とくにアジア向け輸出で増勢が顕著である。アジア向け輸出が好調な背景には、a.IT 需要の持ち直し期待や在庫調整の一巡に伴うアジアでのIT関連の在庫復元の強まり、b.日本企業のアジアへの生産シフトに伴う、化学製品などの原材料や一般機械などの資本財の輸出増加、c.アジア諸国の内需の拡大などがある。
関西の貿易の特徴として、アジアとの結びつきが強いことがあげられる。関西の輸出を仕向け先別にみると、アジア向けは52%と、全国(40%)より高い。2002年度上期の実質輸出額の前年同期比増加率をみると、関西からの輸出(11.2%)が、全国の輸出(8.6%)を上回った。アジア向けの増加率は関西と全国がほぼ同水準であったものの、輸出に占めるアジア向け構成比では関西が全国を上回っていることが、輸出総額における関西の伸びを相対的に高めている。
アジア向け輸出の先行きをみるうえで、アジア経済の自立の動きに留意する必要がある。アジア経済は、アメリカ向けを中心に外需依存型で成長してきたが、近年、域内経済の自立性が高まりつつあり、アメリカへの依存度は低下している。事実、関西の輸出の推移を地域別にみると、アジア向けとアメリカ向けとが乖離してきている。
2003年度の関西の輸出は、アメリカ向けが低調なものの、関西との関連が深いアジア向けが堅調を持続するものと見込まれる。この結果、輸出全体としては若干の減速にとどまると予想され、引き続き関西経済下支えの効果を発揮するものと期待される。 - 2003年度の関西経済を展望すると、家計・企業・公共部門など内需は全国と同様に低調を免れない。しかし、外需については、堅調なアジア向け輸出が景気の下支え役となる結果、2003年度の関西経済は、マイナス成長は避けられないものの、全国に比べ緩やかなものにとどまろう。
- 関西が今後も活力を維持・向上させていくための課題として、以下の点を指摘したい。
a.第1に、中国の成長力の取り込みである。関西は、これまで以上に中国との交流・連携を維持・発展させ、中国が有しているマーケット・資金力を取り込むことが重要である。そのためには関西自体が変化・向上していく必要がある。
b.第2に、都市再生への取り組みである。すでに関西でも多くのプロジェクトが構想・計画されており、早期に実現を図ることが重要である。また、公的サービス・環境整備にかかわるNPO活動への支援が望まれる。
c.第3に、産学連携の推進である。地域経済の活力維持・向上には、産学連携の推進を通じて、研究開発型・知識集約型の企業を生み出すことが不可欠である。さらにスピードを上げて体制を整えることが要請される。
d.第4に、観光消費の拡大である。関西が集客力を高めるなかで、観光関連での消費需要をより多く享受していくためには、域外からの訪問者の割合を高めていくことが重要である。その際、マーケティングの強化が欠かせない。
e.第5に、雇用機会の創出である。雇用形態を多様化し、企業に長年勤めてきた中高齢者層が有する、優れた技能やノウハウ、経験を生かせる機会を一層拡大すべきである。