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コラム「研究員のココロ」

ポスト成果主義と人事システムのあり方

2004年08月09日 角 直紀


 SI企業でもある弊社は、今後の人事のあり方のみならず、それを踏まえた人事に関するシステムのあり方をも研究している。本稿では、成果主義導入後の人事部の役割変化を踏まえた人事システムはどうあるべきかを論じることとしたい。


1.ポスト成果主義という状況

 成果主義人事制度はごく短期間にかなり多くの日本企業に導入された仕組みであるが、現在は導入が一段落して、検証がなされている時期である。
 導入時期にはこれまでの年功序列を排除するものとして殆どの人が賛成した成果主義であるが、運用段階に到っての評判は必ずしも良くない。「評価者に問題がある」「短期結果主義になってしまった」等の批判もある。導入した人事部としては、こういった批判を聞きながら、「これで良かったのかどうか」「更にもう一歩進めていくべきか」悩んでいる状況である。
 成果主義導入後の人事部が迫られている選択を、筆者は『ポスト成果主義』と呼んでいるが、これは成果主義の本質をマネジメントの改革と捉えて、これから先の展開が見ていこうというものである。即ち、企業のパフォーマンスを回復させるために導入された成果主義は単に人事制度の中身を変えることではなく、マネジメントそのものの改革を求めていたのであり、これは人事だけの問題ではなく、会社全体を巻き込まなければならない問題だったのである。


2.ポスト成果主義時代における人事部の役割

 成果主義の定着・発展に際して求められる全社的なマネジメント改革は、人事部がリーダーシップを発揮しながら実行していく必要がある。ポスト成果主義において人事部の果たす役割はこれまでと大きく変わってくる。
 人事部の役割の変化をキーワード的に表すならば、「人事制度から人材マネジメントへ」である。つまり、人事制度を企画立案して運用するのに留まらず、人材を採用・育成・活用して成果に繋げる役割である。
 しかし、この役割を果たすために、人事部にはこれまでとは全く違う動き方が求められる。ビジネスの展開スピードが上がり、複雑性が増す環境においては、現場における人材マネジメントが非常に重要であり、現場のライン管理職が、短期的・中長期的に求められている成果が何で、成果に出すために配下の人材をどう動かせば良いのかを理解しなければならない。つまり、人材マネジメントの主役は現場であり、人事部は間接的に現場の人材育成・活用を支援し、全社レベルでの調整を行うのが役割となる。


3.人事関連システムの位置付けの変化

 人事部の役割が変わると当然、人事に関するシステムのあり方も大きく変わってくる。では、どのように変わるのであろうか。
 これまでの人事関連システムは基本的に人事部が人事制度を運営し、給与を支払うために最適化されていた。人事情報は極秘情報として門外不出とされ、全社システムとは距離を置いた位置付けにされていた。
 しかし、人材マネジメントを有効に機能させようとすると、人材に関するシステムのあり方は根本的に異なってくる。つまり、人事情報をオープンにして、如何に現場で活用させるかという視点で見直されなければならないのである。
 具体的には、キャリア情報に留まらず、現在保有しているコンピテンシーやスキルといった情報を現場と人事部が共有する方向が考えられる。更には、情報を蓄積していくことによって、ビジネスの成功と人材との関わりについて、人材活用に関するこれまでの暗黙知が形式知化される可能性もある。
 更には、社員も自立し、自らのキャリアを切り開いていくべき存在として、自分のデータだけでなく、これからのキャリアに関する情報を知ることも必要になる。
 このように人材を巡る情報はこれまでの人事部からの一方向であったのが、現場のマネジメントや社員を巻き込みつつ、多方向でやり取りされるものとなってくる。そして、人事システムは人材をめぐる新しい基幹的な経営情報インフラとなって、人材マネジメントを有効に機能させていかなければならないのである。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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