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コラム「研究員のココロ」

「ジュニアボード・マネジメント」による企業変革

2004年03月22日 手塚貞治


 「スピード競争の時代だからトップダウン」...それって本当だろうか?
 90年代は、日本経済の凋落と軌を一にするように米国経済復活の時代となった。実体経済の盛衰は、経営手法の盛衰をももたらし、いわゆる米国型のトップダウンによる意思決定手法こそが正しいという風潮が広まった。その結果、日本的な組織運営スタイル~野中郁次郎氏の言うところの「ミドルアップダウン」~は、悪の権化のような扱いを受けることとなったのである(もちろん米国企業の経営スタイルも多種多様であり、「米国型」という言葉自体がステレオタイプなのだが)。
 しかし、トヨタやキャノンのように、米国型経営から一定の距離を置いている企業が「勝ち組」として成功していることも、また事実である。企業風土を形成しているのは、そこにいる「人」である。役員であり従業員である。日本企業が多くの日本人によって運営されている以上、やはり日本人に合ったやり方というものがあるのではないだろうか。従来の日本的経営をブラッシュアップすることができないだろうか。
 それに対するひとつの解が、ここでご紹介する「ジュニアボード・マネジメント」である。

図表 ジュニアボード・マネジメントとは?



「ボード」が役員会を意味することから、「ジュニアボード」とは、一言で言えば、社内の中堅クラスの社員を対象とした擬似役員会のことを指す。経営に中堅社員の斬新な意見を取り入れて組織の活性化をはかったり、経営感覚を身につけた人材を育成したりするための経営手法である。
 その起源は、1930年代の米国にある。香辛料で有名なマコーミック社において始められたのが最初とされている。1932年にC.P.マコーミックが弱冠36才で新社長に就任したのに伴い、本来の役員会のほかに、従業員が参加する擬似役員会や各種の委員会を設けて、従業員の意見を反映した経営を図った。この経営スタイルを、マコーミック社では「複合経営制(Multiple Management)」と呼び、この際の擬似役員会をジュニアボード(Junior Board of Directors)と称したのである。
(http://www.mccormick.com)
 その意味で、日本独自の手法ではないし、目新しい手法とも言えないかもしれない。しかし日本でも、ユニチャームや横河電機等いくつかの企業で採用されており成果をあげている。私自身も、コンサルティングの手法として以前からしばしば活用しているが、業種・規模を問わず一定の成果をあげている。
 本手法のポイントは「継続性」である。単なるプロジェクトではないということにご留意いただきたい。一時的に「経営戦略プロジェクト」のようなものを若手に組成させて、ある種のガス抜きに利用することも多いが、そうした一過性のプロジェクトとは本質的に異なるものである。役員会(ボード)と平行してジュニアボードを継続的に設置し、実際の企業経営に資することを目的としているのである。
 企業変革の1つの切り口として、ご検討いただくことをお勧めする次第である。

【参考文献】
『ジュニアボード・マネジメント』手塚貞治(PHP研究所),2004
『知識創造の経営』野中郁次郎(日本経済新聞社),1990
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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