Sohatsu Eyes
燃料電池実用化動向とDESS
2004年06月22日 西村 慶太
最近、燃料電池(FC)の実用化に向けた2つのニュースが報じられました。
一つは家庭用FCのトップランナー方式によるモニター制度立ち上げです。FCのコストや耐久性が本格普及段階に達するまでの移行措置ですが、実証実験から実用化段階へ一歩前進したと見ることもできます。戸建だけでなく集合住宅への設置、家庭用では開発の歴史の短い固体酸化物形への支援策も検討されており、興味深い内容といえます。
もう一つはFCの基盤技術開発を担う新会社設立です。経済産業省の呼びかけに対し、FC開発の先進メーカー10社程度が協力して設立される予定です。
FCのさらなる性能向上の壁となっている基礎技術分野での開発を一気に進めることを目的としたものです。
どちらも2005年度から3~5年間の実施方針が固められています。FCの実用化に向け、コスト負担の緩和、さらなる技術力底上げに向けた道筋が示されたこの期間は、FCを核とした水素エネルギー社会実現に向けた正念場となるでしょう。
しかし、FCの技術開発、普及が順調に進んだとしても問題が残ります。FCや太陽光発電などの小型分散型電源が大量に普及すると、既存の電力系統に悪影響を及ぼすことが懸念されているからです。そこで重要性を増すのがネットワーク技術です。
DESS(Decentralized Energy System & Software)コンソーシアムでは、昨年度よりFC等の分散型電源をネットワークして、電・熱を融通するシステムの検討を行っています。ネットワークを上手に活用すれば、電力系統への影響を最小限にとどめるだけでなく、エネルギー効率の向上や自然エネルギーの利用拡大も期待できます。
これまでの検討で、こうしたネットワークシステムの可能性を高めるアイデアも蓄積されてきました。冒頭に紹介した動向と同様に、DESSコンソーシアムも、特に分散型ネットワークという観点から、水素エネルギー社会実現の一翼を担えるように頑張っていきたいと思います。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。