Business & Economic Review 2004年03月号
【REPORT】
関西におけるビジネス・エンジェルの活性化策-創業期のベンチャー企業支援を目指して
2004年02月25日 横田朝行
要約
- 現状、関西においてはベンチャー企業が輩出する状況には至っていないが、様々な面でその萌芽がみられる。こうした関西のもつポテンシャルを一段と発揮するには、創業・企業成長の隘路をなくし、成功のロールモデル(模範)を作ることが必要である。
シード(事業コンセプト確認)、スタートアップ(製品開発)の時期に、可能性のあるビジネス・プランを持つ30~40歳代の起業家を見いだして支援すれば、関西でベンチャー企業の種を増やすことが出来る。ベンチャー起業家にとって、創業期の資金調達が最大のネックとなっている。 - アメリカでは、ベンチャー企業のシード、スタートアップ期の資金調達に大きな役割を果たしているのは、ビジネス・エンジェル(ベンチャー企業に投資する個人投資家)である。
アメリカでは大学発ベンチャーへのリスク・マネー供給の必要性から、ビジネス・エンジェルに目が向けられ、コンピューター・ネットワークを使って個人投資家とベンチャー企業をマッチングさせる仕組みが発達した。ビジネス・エンジェルのネットワークは、当初大学に関係の深いNPO でモデルが作られ、地域の専門家による支援機能を併せ持つ地域一体型として普及していった。 - 日本にも、ビジネス・エンジェル予備軍は数多く存在し、現在、ビジネス・エンジェルが顕在化しつつある。ビジネス・エンジェルの投資は、1990年代後半から急速に活発化しており、江戸時代から続く中小企業者の「のれん分け」から、小規模の投資家、ベンチャー成功者に至るまで幅広い層で関心が高まっている。
- 関西におけるビジネス・エンジェルの潜在規模は、人数が3,000人、年間投資額が166億円と推計される。すでにビジネス・エンジェルがグループをつくり、定期的なビジネス・コンペティションを行っており、投資も増加しつつある。このような動きを一段と促進していく必要がある。
- 有望なベンチャー企業を発掘するためには、地域に密着したインフォーマルな情報が必要である。したがって、関西のビジネス・エンジェルが、シード、スタートアップ期のベンチャー企業を発掘して育て、ベンチャーキャピタルの投資へつないでいくことが、関西のベンチャー育成には不可欠である。
- 関西においてビジネス・エンジェルを拡大させるためには、民間の動きを支援する体制をつくること、エンジェル活動についてのインセンティブを設け潜在的なビジネス・エンジェルの参加を後押しすることが必要である。そのための具体的方策として、(1)ビジネス・エンジェル・ネットワークの形成、(2)ストック・オプション税制の改革、(3)エンジェル税制の拡充、(4)ベンチャーファンドの一層の活用、の四つが重要である。